【小松大谷-明豊】七回表小松大谷無死一、二塁、田西が2点三塁打を放ち、ガッツポーズ=阪神甲子園球場で2024年8月8日、滝川大貴撮影

高校野球・夏の甲子園1回戦(8日)

○小松大谷(石川)8―4明豊(大分)●

 続いていた「サヨナラ負けの連鎖」を3度目で食い止めた。2年生スラッガーが凡打を挽回する殊勲打で立役者となった。

 1点を追う七回。小松大谷は無死一、二塁で3番・田西称(たさい・とな)選手が左打席に入った。追い込まれた直後の5球目。甘くきた変化球を振り抜くと、打球は右中間を破った。走者一掃の逆転三塁打に、塁上では何度も力強く拳を握った。

 2段モーションから緩急をつけてくる相手エース、野田皇志投手にタイミングが合わず、第2打席では140キロの外角直球に見逃し三振。第3打席でも内角低めのチェンジアップに空振り三振を喫していた。

 「せっかくの甲子園。これで終わるわけにはいかない。積極的に振ろう」。願ってもない好機に覚悟を決めて入った打席だった。七回の打席では「後ろにつなぐ」という意識を高めてうまくバットを合わせ、この回一挙3得点につなげた。

 春夏合わせた甲子園出場は夏の2回のみ。いずれも1回戦で苦い思い出がある。

 まずはさかのぼること39年前。校名が北陸大谷だった第67回大会の1985年に鹿児島商工と対戦し、1点リードの九回裏に2点をとられて逆転サヨナラ負けした。高川学園(山口)と対戦した第103回大会の2021年は、押し出し四球でのサヨナラ負けだった。

 今回もさすがにサヨナラのイメージがよぎった。だから試合前から策を打った。東野達(いたる)主将がその内容を明かした。「サヨナラのイメージをもってはいってしまったら、また同じことの繰り返しだと思ったのでジャンケンで勝って先攻を選んだ」。ジャンケンは狙い通り勝ち、サヨナラを乗り越える意味を込めてあえて先攻を選択し、甲子園初勝利をつかんだ。

 石川大会では準決勝で日本航空石川に競り勝ち、決勝で、今春のセンバツで4強入りした星稜を破ってつかんだ甲子園切符。決勝でも先制2ランを放って勝利の流れを作ったのが田西選手だった。「(今回は)甲子園で校歌を歌えた」。西野貴裕監督の表情にようやく歴史を塗り替えた安堵(あんど)感がにじんだ。【黒詰拓也】

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