レスリング女子50キロ級1回戦、相手にポイントを奪われ、肩を落す須崎優衣=シャンドマルス・アリーナで2024年8月6日、平川義之撮影

レスリング 女子50キロ級(6日、シャンドマルス・アリーナ)

須崎優衣選手(25)=キッツ 1回戦敗退

 まさかの衝撃だった。五輪2連覇の有力候補とされたレスリング女子50キロ級の須崎優衣選手は、1回戦でインドの選手に敗れ、夢が絶たれた。

 圧倒的な強さで勝ち上がり女王となった東京五輪。それでも須崎選手の向上心は尽きることなく「最強女王」になるための意欲は増すばかりだった。「元々レスリングが大好きだったけれど、もっとさらに大好きになって。もっともっと突き詰めたい、極めたい、強くなりたいと思いました」

 技や戦い方の引き出しを増やそうと、目を向けたのは海外。「『コンフォートゾーン(居心地のいい空間)』を自ら打破して抜け出す。新しい未知の世界に飛び込むというのは勇気がいるが、得る物も大きい」。これまで米国やハンガリーなど5~6カ国に足を運んで、SNS(ネット交流サービス)で自ら連絡を取った、現地のつわものたちとともにマットで汗を流した。

 今年5月にはレスリングの「聖地」と言われるロシア南部ダゲスタン共和国に単身で渡り、五輪メダリストの選手と練習を行った。現地ではクマと練習する選手もいると聞き、それほどの度胸と精神力を自分も手にしたいと本気で願った。

 昨年12月には「東京、パリ、ロサンゼルス、そしてその次のオリンピック(ブリスベン)まで金メダルを獲得することが大きな夢」と語って、五輪4連覇を目指すことを公言した。それを言葉にできるほどの練習を重ね、自信を築きあげてきたつもりだった。

 だが、パリに潜む五輪の魔物の前に壮大な夢はついえた。「ここで終わってしまったことが信じられない」。懸けてきたものが大きいだけに、今はただ、その言葉を絞り出すのが精いっぱいだった。【パリ角田直哉】

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