パリ・オリンピックの陸上では、これまでの五輪では聞いたことがなかったレースが設けられた。予選が振るわなかった選手を救済する敗者復活ラウンドだ。柔道やレスリングではおなじみだが、どういった理由があるのだろうか。
「最初の50メートルくらいの加速はいいかなと思っていたけど……。ダメなレースだった」。5日に行われた、男子200メートル予選。各組上位3着までが準決勝に進むレースで6着に終わった初出場の上山紘輝(住友電工)の口からは反省の言葉ばかりが出た。
これまでの五輪であれば「予選敗退」を思わせるコメントだが、上山には敗者復活ラウンドが残されていた。「いつもなら『ここで終わりです』と言われているようなものだけど、(準決勝進出の)道がある」と複雑な表情ながら前向きに捉えた。
五輪の陸上ではこれまで、予選を着順で突破できなかった選手のうちタイム上位の選手を「拾う」形式を取っていた。しかし、パリ五輪では200~1500メートルの障害(ハードル)を含む種目でそれをやめ、敗者復活ラウンドを導入した。
要は、当該種目の選手は欠場や途中棄権でない限りは今大会最低でも2回は走ることができるということだ。新たな制度について、世界陸連のセバスチャン・コー会長はアスリート側や放送局と協議した結果だとし、「(着順ではっきり分ける敗者復活の方が)競技の進行をわかりやすくするし、(レースが増えることで)より多くの露出を与えることになる」と説明している。
なお、予備予選が実施される100メートルと、体力の消耗が激しい長距離種目には導入されない。
200メートルの敗者復活ラウンドでは各組1着の選手と、それ以外のタイム上位2選手が準決勝に進む。仮に敗者復活から準決勝、さらに決勝に進むと5日から4日連続でレースに臨むことになる。上山は男子400メートルリレー(8日に予選)のメンバーでもあり、「しんどいけど、疲労を抜いた状態の体で最大限のパフォーマンスをしないと」と語る。
実際、日本陸連側も疲労を懸念した対応を取っている。予選で準決勝進出を逃した男子400メートルの日本の3選手は、上位進出がより期待される男子1600メートルリレーに集中することを理由に個人種目の敗者復活ラウンドを欠場した。
競技のためを思った露出度の拡大策が、選手の負担増加を意味するのか。各種目で選手たちが残す結果で、その答えは出るはずだ。【パリ岩壁峻】
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