陸上男子100メートル準決勝3組、9秒96のタイムでも敗退し頭を抱えるサニブラウン・ハキーム=フランス競技場で2024年8月4日、中川祐一撮影

 パリ・オリンピック第10日は4日、陸上男子100メートル準決勝が行われ、2023年世界選手権6位のサニブラウン・ハキーム(東レ)は日本歴代2位の9秒96をマークしたが、決勝進出を逃した。

 異次元のスピードに面食らった。

 自己記録を0秒01更新する9秒96をマークしても「レベルが全然違う」と、サニブラウンの表情は全くさえない。自身を含め、9秒9台をマークした4人の選手が準決勝で敗退した。世界陸連によると、9秒台の選手が決勝に進めないのは五輪史上初だ。

 サニブラウンは「(日本記録の)9秒95を切ることを想定した」という。狙いは決して的外れではなかったが、世界のトップスプリンターたちはその想定をさらに上回った。

 長年の課題だったスタートは見違えた。昨秋あたりからよどみなく加速できる自信をつかんでいた。

 「2歩目で足がいい角度で返るようになり、3歩目のロスがなくなった」

 準決勝のスタートもきれいに足を刻んだ。「負ける気がしなかったし、練習したかいはあった」と振り返ったが、終盤に失速した。

 五輪は東京に続く2回目の出場だが、100メートルは今回が初めて。世界選手権では2大会連続で決勝進出を果たしているが、「やっぱり五輪は違った」。

 そして、サニブラウンはこう振り返った。「持ちタイムが良くても悪くても、他の人を気にせずに自分の走りができる選手が勝っていく」。スタートからフィニッシュまで、走りの組み立てに少しでもほころびが出れば、世界の猛者たちにのみ込まれていくことを痛感した。

 4年後のロサンゼルス五輪を目指す前に、サニブラウンにはもう一つ照準を合わせる大会がある。来秋に東京で34年ぶりに開かれる世界選手権だ。

 「自分のパフォーマンスで人々にいろんな感情を与えることができれば。それが自分の一番の思いですね」

 世界選手権で3大会連続の決勝、そして日本選手初の表彰台へ。「国立競技場を満員にしたい。この(パリ五輪での)悔しさを胸に、来年はいい走りをする」。それがロス五輪への確かなステップになると信じている。【パリ岩壁峻】

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