「スマホなし」は強化に効果あり? 高校生にとっても重要な交流ツールであるスマートフォンだが、7日開幕の第106回全国高校野球選手権大会で15年ぶり2回目出場の滋賀学園はほぼ全選手が寮生活を送る中、2000年に就任した山口達也監督(53)の方針でスマホの持ち込みを禁じられている。ナインはどう思っているのか。【菊池真由】
甲子園で春夏通算9回の優勝を誇り今大会にも出場する大阪桐蔭も寮生活でスマホの持ち込みは禁止。一方、21年春の選抜大会で甲子園初出場を果たし、今年は春夏連続出場の京都国際は2年前からスマホを許可した。各高校の対応はさまざまだ。
滋賀学園の選手はスマホなしを知った上で入部。中学まで愛用していた選手も多いが、大会注目の大型遊撃手、岩井天史(3年)が「もう慣れた」と話すように3年生にもなれば、スマホなしが日常だ。
選手は「練習に打ち込める」と口をそろえる。「野球しかやることがないので、練習しない選手はいない」と主将の門田侑也。それが山口監督の一番の狙いだった。
練習以外にも効果が出ている。寮生活ではスマホがないことで選手たちが自然と食堂などに集まるという。トランプやUNO(ウノ)などカードゲームをしたり、にらめっこやけん玉といった幼少時から誰もがやってきた遊びをしたりと楽しんでいる。
顔を合わせれば会話にも花が咲く。門田は、「風呂に入り、将来や恋愛の話などをすることが最近の楽しみ」と“裸の付き合い”を気に入っている。
スマホの画面と向き合うのではなく、選手同士が向き合うことでチームの仲が深まり、団結力が増した。
だが、インターネット上には選手が成長できる情報がある可能性がある。また、スマホの動画撮影・再生機能は練習に役立つこともあるだろう。スマホなしのデメリットはないだろうか。
選手は、学校から支給されるタブレット端末は活用している。寮では消灯時間までインターネットにつなげることができ、トレーニング方法など参考になる情報を集めている。動画撮影機能もあり、投打のフォームチェックに使う。だが、LINE(ライン)やX(ツイッター)、インスタグラムといったネット交流サービス(SNS)系を含めたアプリのダウンロードはできず、端末を手放したくなくなるようなことはない。インターネットともほどよく付き合っている。
ただ、「(選手同士で)緊急の連絡ができない」「交流できないから他チームの情報がわからない」「友達などと連絡できない」といった悩みや不満がないわけではない。県外出身者も多い選手らにとっては時に故郷を思い出して寂しい思いもすることがあるという。
スマホなしを受け入れ、自身の成長とチームの強化につなげてきた選手たち。その成果を発揮するのは、有田工(佐賀)と対戦する大会第1日の第1試合(7日午前10時開始予定)の開幕戦だ。
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