ゴルフ男子最終ラウンド2番、ティーショットを放つ松山英樹=ゴルフナショナルで2024年8月4日、玉城達郎撮影

パリ・オリンピック ゴルフ男子 最終日(4日・ゴルフナショナル)

松山英樹選手(32) 銅メダル

 喜びの一報が届いた時、松山英樹選手は練習用グリーンでパットの調整中だった。メダル争いが大混戦となり、プレーオフの可能性に備えていたためだ。

 上位陣の動向が分かり、丸山茂樹監督が「決まったぞ!」と駆け寄った。緊張の糸が切れず、軽くハイタッチだけして、あまり表情は変わらない。いかにも松山選手らしい「控えめ」な歓喜の瞬間となった。

 大きな重圧と向き合い、勝ちきった。松山選手は前半からスコアを伸ばしたが、後半に入ると1ホールごとにメダル圏内の選手が目まぐるしく入れ替わる激しい展開となった。特に15番からの終盤はグリーン手前に大きな池が口を開くなど難度の高いコースだった。

 「誰だって(手が)動かないですよ、あんなの」。一打一打が結果に直結するパットの動きに硬さが出た。グリーンの好位置に付けても、なかなかスコアを伸ばせない。

 それでもきっちりパーを並べて、暫定3位でホールアウト。最後までメダルを争ったジョン・ラーム選手(スペイン)が17、18番でボギーをたたき、明暗が分かれた。

 3年前の悔しさを忘れていなかった。2021年は4月に米メジャーのマスターズ・トーナメントをアジア勢で初めて制し、夏の東京オリンピックでも好成績が期待された。しかし、結果は3位に並んだ7人によるプレーオフの末、メダルに届かなかった。

 雪辱を誓い戻った舞台。新型コロナウイルス禍は過ぎ、会場は各国・地域の旗を身につけたギャラリーが埋め尽くした。鳴りやまない大歓声は、しばしば選手のプレーを中断させた。「4大メジャーと五輪は全然違うもの」。意地と誇りがぶつかり合う戦いで、最後まで集中力を保ち、日本男子初のメダルを手にした。

 「これを取るために東京では苦労した。すごくうれしい銅メダル」

 派手なリアクションはなかったが、じっくりと重みをかみ締めた。

 100%の満足感はなく、「(表彰式では)隣に金メダルをかけている人がいて。うれしい半面、悔しいような気持ちでいる」というのが本音だ。一方で「一つ自分の中で、これ(銅メダル)を持っていることによって、すごく変わる部分もあると思う」とも語った。

 五輪メダリストの称号が、日本ゴルフ界のエースの未来を、さらに明るく彩っていく。【パリ角田直哉】

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