体操男子種目別床運動で金メダルを獲得したカルロスエドリエル・ユーロ選手=パリのベルシー・アリーナで2024年8月3日、ロイター

パリ・オリンピック 体操男子種目別床運動 決勝(3日、ベルシー・アリーナ)

カルロスエドリエル・ユーロ選手(フィリピン)=金メダル

 優勝が決まると、信じられないと言わんばかりに目を丸くし頭を抱えた。24歳のカルロスエドリエル・ユーロ選手は3日に実施された体操の種目別床運動で、フィリピンにとっては全競技を通じて夏季五輪男子、初の金メダルをもたらした。「感無量」と肩を震わせた小さなスターは、実は日本と深いつながりを持った人物だ。

 圧巻の床運動の演技だった。高難度の跳躍を次々と決めていき最後の着地もピタリと止めると、会場中から大歓声が降り注いだ。豪快な大技と美しさを両立させた完璧な演技を見せた。

 ユーロ選手は、体操ニッポンの影響を色濃く受けながら育ってきた。

 首都マニラで生まれ、7歳で体操をスタート。憧れは五輪個人総合2連覇を達成した内村航平さんだ。転機は2013年。日本体操協会の派遣でフィリピン代表の指導に訪れた釘宮宗大さんと出会い、人生が変わった。「五輪でメダルを取りたいか?」と尋ねる釘宮さんに、ユーロ選手は「はい、絶対に」とうなずいたという。

 練習環境が十分とは言えないフィリピンから16年に来日すると、釘宮さんとともに生活しながら練習を重ねた。22年から徳洲会体操クラブに所属してさらに成長。「カロイ」の愛称で親しまれた。

 フィリピン代表として21年東京五輪は種目別跳馬で4位入賞し、これまで世界選手権でも計6個のメダルを手にして実績を重ねた。23年に母国に戻りパリ五輪を目指してきた。

 今大会かつての仲間の活躍に刺激を受けた。特に徳洲会所属の岡慎之助選手(20)は個人総合と団体総合の2冠を達成。個人総合での新王者誕生の瞬間を目の当たりにしたユーロ選手は「本当にすごい。とてもきれいな体操だった。僕も頑張りたい」と語っていた。

 3日後、主役としてスポットライトの中心に立ったのはユーロ選手だった。

 「私たちは本当に小さな国で、選手の数も米国や英国とは違う。応援してくれたフィリピンの人々に(金メダルを)ささげます」。ずっと小刻みに震えていた「カロイ」の小さな背中が、成し遂げたことの大きさを物語っていた。【パリ角田直哉】

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