アマチュアからプロまで、65台以上が参戦している2024シーズンのスーパー耐久。

この舞台で、ある理念を掲げ勝利に挑むチームがある。

自動車ディーラー・埼玉トヨペットが立ち上げた「埼玉グリーンブレイブ」。代表兼監督の青柳浩(51)は語る。

「本来レースというのは、1秒でも早くゴールして勝つために取り組んでいるものですが、同じぐらい大切にしているのが人を育てること」

実はこのチームのメカニックは、普段、埼玉トヨペットで整備士として働く従業員。

2013年から人材育成を目的にスーパー耐久に参戦。2015年にST-4クラスでシリーズチャンピオンを獲得。そして去年、ST-Zクラスで2度目のシリーズチャンピオンに輝いた。自動車ディーラーの整備士がなぜレースに?青柳に尋ねると。

「極限の世界で整備を担当してもらって、時間の使い方とか、緊張感とか、そういうものを経験してもらって人として育ってもらう」

今シーズン、チームのメカニックに加入したのが、入社14年目の飯泉圭亮(いいずみけいすけ)、35歳。

社内の技術コンクールで表彰された実績はあるものの、4月に行われたスーパー耐久開幕戦では、普段と違う現場に、戸惑いの連続だった。先輩メカニックに古川寛大(44)が指導する。

「遅いし、音もおかしいし、そういうところをやっていかないと」

飯泉も職場とサーキットの違いを肌で感じ取っていた。

「本当にスピード重視って感じて、1秒を争う戦いになるわけなので、緊張感はすごいなって感じました」

レースの5日前。埼玉県坂戸市にある埼玉トヨペットのモータースポーツファクトリーでは、メカニックを招集し、タイヤ交換の作業を繰り返し行っていた。1秒を争うピットの作業。飯泉も本番さながらに臨む。

「ミスなく確実に素早く、両立させて、表彰台に立てるように、力をみんなで合わせられたらと思っています」

そして7月28日(日)、大分・オートポリスで行われたスーパー耐久第3戦。5時間で行われる長丁場のレース。埼玉グリーンブレイブは予選2番手から優勝を狙う。

しかし、開始からわずか1時間。ホームストレートで外側からかぶせてきた他のマシンと接触。緊急ピットインを余儀なくされる。

メカニックの出番。飯泉は右のフロントとリアタイヤの交換を担当し、最小限のタイムロスでマシンをコースに復帰させることができた。 

「びっくりしましたね、落ち着いて(タイヤ交換)できました」

その後は2位をキープしながら20秒前を行くトップを追う。

そしてレースが残り1時間半になったところで、チームは勝負に出る。

最後のピットストップ。

チームはタイヤ交換を行わずに給油だけを行い、ピットストップの時間を短縮。

ライバルチームの意表を突き、これで逆転。

古いタイヤのままドライバーが見事に走り切り、トップでチェッカーフラッグ。チーム一丸で今シーズン2勝目を挙げた。

ドライバーから「タイヤ交換ナイスです!」と声を掛けられ、緊張していた飯泉の表情も緩んだ。

レースの現場で人を育てる。代表兼監督の青柳も手応えを感じている。

「みんなが上手く回って結果につながった優勝だと思うので、全力でやっているからこそ、勝利をした時の喜びも感動的な喜びを得られますし、そういう成功体験を通して仕事も人間性も成長していってくれたら嬉しいですね」

(映像提供:STMO)

「MONDAY MOTOR SPORT」
フジテレビ系「FNN Live News α」内で放送
毎週月曜23時40分~

スーパー耐久2024
9月7日(日)
第4戦 モビリティリゾートもてぎ
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トヨタイムズ
https://toyotatimes.jp/
 

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