パリ・オリンピックの開会式で、セルフィー(自撮り)を撮る日本の選手ら=2024年7月26日、サムスン電子提供
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 パリ・オリンピックの表彰台では毎回、四角い機器を手にしたメダリストたちが「自撮り」をしている。スマートフォンなど私物の持ち込みが禁止されている表彰式で、選手による自撮りは異例。背景には、大会スポンサーを務める韓国サムスン電子のプロモーション戦略があった。

 サムスン電子によると、国際オリンピック委員会(IOC)や大会組織委員会と協力して、「ビクトリーセルフィー」をパリ五輪で初めて実施している。スタッフから受け取った同社のスマホで、ライバルと健闘をたたえ合う様子を選手が自ら撮影するという企画だ。スケートボード女子ストリートで銅メダルを獲得したブラジルのライッサ・レアウ選手は、「競争を超えた仲間の愛を感じることができた瞬間だった」と振り返った。

 この商品は「ギャラクシーZフリップ6」で、コンパクトに折り畳むことができ、多様な角度からの撮影が可能。同社は大会の出場選手らに1万7000台を無料で提供している。撮影した写真は専用アプリにリアルタイムで保存され、選手は写真をダウンロードしたり、家族や友人らと共有したりできる。生成AI(人工知能)を搭載した最新モデルには、AI通訳などの機能も備わっていて、各国・地域の選手の交流にも一役買っている。

スケートボード女子ストリートの表彰式でセルフィー(自撮り)を撮る(左から)日本の赤間凜音選手、吉沢恋選手、ブラジルのライッサ・レアウ選手=2024年7月28日、サムスン電子提供・ゲッティ
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 サムスン電子は今大会で大々的なプロモーションを展開。韓国紙「中央日報」によると、同社がパリ五輪で投じたマーケティング費用は3000億ウォン(約330億円)を超える。2016年のリオデジャネイロ五輪や21年の東京五輪はそれぞれ約1000億~2000億ウォン規模だった。

 同社は開会式で各国・地域の選手団が乗っていたボートにも、200台以上のスマホを設置して生中継をサポートした。選手村やパリ市内の広場に、スポーツゲームやAIスマホの機能を体験できる「オリンピック体験館」を開設している。

 サムスン電子は今年、世界初のAIスマホを発売。米アップルもiPhoneにAI機能を導入すると発表しており、五輪を舞台にした大規模なプロモーションで先手を打った形だ。サムスン電子は「サムスン電子の努力はパリ五輪を『完全に開かれた大会』にするための一環だ」とのコメントを発表した。【ソウル日下部元美】

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