第95回都市対抗野球大会で初優勝し、黒獅子旗を受け取る横浜市の矢野幸耶主将=東京ドームで2024年7月30日、宮間俊樹撮影

 第95回都市対抗野球大会(毎日新聞社、日本野球連盟主催)は30日の決勝で横浜市・三菱重工Eastが仙台市・JR東日本東北に勝ち、初優勝を果たした。大会の防御率は3・48で、金属バットから木製バットに変わった第73回大会(2002年)以降では最も高くなった。

 防御率2点台などの「投高打低」の傾向が長く続いたが、過去2大会は防御率が3点台前半へと上昇し、今大会はさらに高くなった。コールド試合は第77回大会(06年)と第93回大会(22年)の2試合を上回り、過去最多の3試合だった。

 大垣市・西濃運輸は4試合で29得点、大阪市・NTT西日本は3試合で27得点で、ともにチーム打率は3割を超え、5試合で24得点だった仙台市とともに、打力の高さが目立った。日本野球連盟アスリート委員会の坂口裕之委員長は打撃力向上の要因について「数年前から各チームがトラックマンやラプソードなどの分析機器を導入して打球速度や打球角度を追求するようになり、どの打順の選手からも長打が出るようになっているのではないか」と見る。

 優勝した横浜市は5試合で19得点と数字は突出していないが、本塁打6本、二塁打11本はいずれも最多と長打力が光った。2番の下山悠介(東芝から補強)が2本塁打を放ち、神戸市・高砂市・三菱重工Westの北條史也、さいたま市・日本通運の添田真海も2番で一発を放つなど、従来の「つなぎの2番」ではなく強打者を置く傾向が見られ、犠打飛は前回より13減の70本と減少が顕著だった。

 こうした「打撃」に特徴が見られた中で、横浜市は防御率0・80と投手力の高さが際立った。1回戦で完封勝利を挙げ、橋戸賞(最優秀選手賞)に輝いた本間大暉と大野亨輔の左右の柱が安定していた。大会全体の完投数は前回大会と同じ7(完封2)で、各チームとも継投が主流だったことが分かる。2勝したのは仙台市・小島康明(TDKから補強)だけだった。

補強の活躍

 下山や小島、大垣市の山崎大輝(JR東海からの補強)、大阪市・NTT西日本の浜田竜之祐(日本新薬からの補強)ら、上位進出チームを中心に補強選手が活躍した。横浜市の本間は2年前は補強の立場で優勝した経験を今大会につなげており、改めて補強の重要さを感じさせた。

 優勝候補に挙がっていた東京都・NTT東日本や浜松市・ヤマハが1回戦で敗れた一方、代表枠が一つしかない地区から出場した札幌市・北海道ガス、高知市・四国銀行が初戦を突破した。出場2回目の小山市・栃木市・エイジェックは大会初勝利を挙げ、東北勢は仙台市の躍進に加えて石巻市・日本製紙石巻が11年ぶりに本大会で勝利を飾った。昨年は優勝した豊田市・トヨタ自動車など5チームが8強入りした東海勢は、4強入りした大垣市を除いて2回戦までに姿を消すなど、各地区の実力がより拮抗(きっこう)していることを印象づけた。

 また、今大会からビデオ検証の対象が拡大し、全ての塁でのアウト、セーフの判定などが対象に加わった。19回の検証があり、判定が覆ったケースが10回あった。【円谷美晶】

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