競泳男子200メートルバタフライ予選で敗退した本多灯=ラデファンス・アリーナで2024年7月30日、中川祐一撮影

パリ・オリンピック 競泳男子200メートルバタフライ予選(30日・ラデファンス・アリーナ)

本多灯選手(イトマン東進)=1分57秒30(全体22位・敗退)

 どんどん先を行く周りの選手は見えていた。だが、なぜか力が出てこなかった。

 2021年の東京オリンピックで銀メダルを獲得し、今回も表彰台が期待された本多灯選手が、予選敗退に終わった。「タイムを見る前から『終わっちゃったな』という感じ」と、戸惑いを隠せなかった。

 体調に問題はなく「体の重さやこわ張る感じもなかった」というが、序盤から思うようにスピードに乗れず、前半100メートルを6位で折り返す。

 本来の持ち味である後半も、この日はストロークの伸びを欠いた。ラストは上体が起き上がる苦しそうな泳ぎを見せ、自己ベストから4秒以上遅れるタイムでフィニッシュした。

 「ずっと『守りに入らないように』と言ってきたが、このレースでそれが出てしまった」。言葉を絞り出すようにレースを振り返った。

競泳男子200メートルバタフライ予選で敗退した本多灯=ラデファンス・アリーナで2024年7月30日、中川祐一撮影

 大学2年で臨んだ東京五輪で銀メダルに輝き、日本競泳界のエースに成長した。その後は国際大会では表彰台の「常連」となった。笑顔でガッツポーズを作りながら入場するなど、持ち前の明るいキャラクターでも注目を集めた。

 だが、今回のパリ五輪に向けて、すべてが順調というわけではなかった。2月の世界選手権では金メダルを獲得したものの、直前に足首を故障していた。

 3月の代表選考会は、寺門弦輝選手に敗れて2位。「これまでは(レースの苦しさへの)怖さを知らずに泳いできた」というが、初めてといってよい恐怖心と闘っていたのも事実だ。

 「心配はどの大会でもある。オリンピックだけに感じるものは大きかったかもしれない」。自身2回目の五輪を迎え、知らず知らずのうちに重圧がのしかかっていたのかもしれない。

 「結果論でしかないが、うまく泳げなかったのが今回のレース。今は何も言えない」。この結果を正面から受け止めるには、少し時間がかかりそうだ。【深野麟之介】

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