体操男子団体決勝・橋本大輝選手の鉄棒で金メダルが決まり、成田市のパブリックビューイングで喜ぶ恩師の山岸信行さん(前列左から3人目)、冨田洋之さん(同5人目)ら=千葉県成田市で2024年7月30日午前3時9分、合田月美撮影

 パリ・オリンピック体操男子団体総合で、日本が2大会ぶりの金メダルを獲得した。メンバー5人のうち、主将・萱和馬(27)、エース・橋本大輝(22)、谷川航(28)の3選手は千葉県内出身。大逆転で達成した偉業に、県内各地の関係者らから喝采が送られた。

 橋本選手の出身地・成田市の映画館での市主催のパブリックビューイング(PV)には、市民約110人が参加し、中継を見守った。2004年アテネ大会の28年ぶり団体総合金メダルメンバーで、順天堂大で橋本選手らを指導した冨田洋之准教授(43)が解説を務めた。ミスがあった今大会の予選後、橋本選手から「まずは団体決勝を頑張ります」とメールを寄せたことなどを明かし、「上り調子でやってくれると思う」と期待した。

 その言葉通り、橋本選手はゆかで高得点を挙げ、上々の滑り出しだったが、次のあん馬で落下。一時は5位に後退し、最後の鉄棒を前に首位・中国と3点差以上。だが、鉄棒で中国選手の度重なる落下で日本が僅差で首位に。最終演技者の橋本選手に託された。

体操男子団体決勝、床運動を終え拳を突き上げる橋本大輝=ベルシー・アリーナで2024年7月29日、玉城達郎撮影

 「頼んだぞー」。会場から祈るような声援が飛び交う中、橋本選手が鮮やかに高難度の技を決めて着地すると、会場は歓喜に包まれた。

 橋本選手が体操を始めた6歳から市船橋高に進学するまで徹底して基礎をたたき込んだ「佐原ジュニア体操クラブ」(香取市)の山岸信行さん(68)はPVの最前列で見守った。「着地が(ぴたっと止まる)ビタ止めになっていなかった」と注文を付けたが、「橋本はまだまだできるからどうしても厳しい言い方しかできないが、よくやったなと伝えたいね」と笑顔を見せた。

 家族ぐるみの親交がある地元の応援団長、斉藤利明さん(71)は「団体金メダルおめでとう」と書かれたタオルを広げて立ち上がった。「(帰ってきたら)まず(橋本選手)を抱きます。もうだめかなという時でも最後はやってくれる。人間はミスやいろんなこを経験して大きく羽ばたくことができるんだね」と喜んだ。

体操男子団体決勝、金メダルに口づけをする谷川航=ベルシー・アリーナで2024年7月29日、玉城達郎撮影

 一方、谷川選手と萱選手の出身・船橋市でも喜びの声が上がった。市立船橋高体操部で、橋本選手と谷川選手を指導した神田真司総監督(65)は「(五輪は)何が起きるか分からない。感動をありがとう、ですよ。最後まであきらめない日本チーム5人の勝利です」と喜びをかみしめた。同部監督で、萱選手が習志野高体操部時代の監督だった大竹秀一さん(46)は「彼らの夢がかない、最高の笑顔が見られて本当にうれしい。最高の結果以上に、あきらめない心、つなぐ大切さ、自分と仲間や、今までやってきたことを信じて疑わない姿に感動した」とコメントした。

体操男子団体決勝、床運動を終え声を上げる萱和磨=ベルシー・アリーナで2024年7月29日、玉城達郎撮影

 また、萱選手の小中学生時代のコーチで、船橋市立市場小教諭の松本幸久さん(44)は、萱選手が主将として「絶対あきらめるな」とチームメートに呼び掛けていた姿を中継で見て「一時は点差も離れていたので、メンバーを鼓舞することで自分にも言い聞かせていたのではないか。いつか、こういう(五輪で金メダルを取る)日が来ると思っていた。すごくうれしい」と笑顔だった。

 また、谷川選手の小中学生時代のコーチ、健伸スポーツクラブの倉島貴司さん(56)は「(体操の)指導者を志してきて良かった。航には、『おめでとう』もだけど、『ありがとう』と伝えたい」と話した。【合田月美、石塚孝志】

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