大歓声の競技会場。

集まりし世界のトップスイマー。

女子100メートルバタフライの予選、池江選手は緊張していました。

「観客の声援などが久しぶりすぎるというか、日本の選考大会でも感じることができないような環境なので、特別な緊張感だった」とレース前を振り返った池江選手。

東京オリンピックは無観客、そして去年の世界選手権は福岡市での開催で、海外での世界最高峰の独特の雰囲気は久しぶりに味わうものでした。

それゆえか「緊張から体が動かない」と話した泳ぎ。

ターン動作もうまくいかず、レース後半にペースを上げようとするもスピードに乗れなかったといいます。

タイムは57秒82。

予選後の池江選手

ことし3月の代表選考の大会でマークした病気から復帰後の自己ベストよりおよそ0秒8遅れ、なんとか準決勝に進みました。

予選のレース後、池江選手は「もっと行けたはずだったのに、この結果で終わって、すごくふがいないなという気持ち」と話しました。

そして「自分のやるべきことをやる、覚悟を持って頑張る」と切り替えて臨んだ準決勝。

第1レーンでレースに臨んだ池江選手は、前半から攻めの泳ぎで先行し、50メートルのターンでは3番手につけました。

しかし、課題としてきた後半、アメリカのグレッチェン・ウォルシュ選手がオリンピック記録を更新する泳ぎを見せるハイレベルな展開についていけずタイムは57秒79。

予選からほとんど縮められずに全体で12位の順位に終わり、目標としていた決勝進出はなりませんでした。

レース後のインタビューエリア、池江選手は涙が止まらず絞り出すように話し出しました。

「ここまでの努力は何だったんだろうと思うし、頑張ってきた意味はあったのかなと、そんな気持ちでいっぱい。自分なりに一生懸命やってきたつもりだったが何も変わってなかった。本当にいつまで苦しまなければいけないんだろうと思う」と率直な胸の内を語ったうえで、こう付け加えました。

「また4年後、リベンジしに戻ってきたいなと思う」

池江選手は大会前、現時点では2028年のロサンゼルス大会を、競技人生の“区切り”と考えていることを明かしていました。

このパリでの経験をどう生かしていくのか。

池江選手は「結果が出ればいちばんよかったが今は現実を受け止めたい。人って悔しさを経験をしないと成長できないと思うし、今はそう思うしかない。オリンピックは選ばれた人しか立てない場所だし、選ばれた人しか経験できない雰囲気なので、この経験は一生のものだ。次に自分が何をしなければいけないのかちゃんと考えて、落ち着いて行動したい」と前を向きました。

池江選手自身としては大きな悔しさが残った2大会ぶりの個人種目となりましたが、「緊張」「悔しさ」「雰囲気」とオリンピックの舞台で得がたい経験をし、確かな一歩を踏み出したことは間違いありません。

「最終的に全部、正解の道だったなと思える結果を出したい」と大会前、私たちに語っていた池江選手。

涙にくれたパリでのレースは、正解の道へのヒントを与えてくれるはずです。

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【NHKニュース】パリオリンピック2024

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