(28日、第106回全国高校野球選手権大阪大会決勝 大阪桐蔭3―1東海大大阪仰星) 

 3点差を追う八回裏、東海大大阪仰星の攻撃。2死から四球と安打でつないで一、二塁とした。ここで5番の東村奎汰(けいた)選手(3年)は「ピッチャーが頑張っている。何としても点を取る」という思いで打席に立った。

 2ストライクと追い込まれたが、変化球を振り抜く。打球は右翼線へ。走者が1人かえり、2点差に追い上げた。東村選手は二塁に滑り込んですぐに立ち上がると、両手を思い切り振り上げて、仲間たちを鼓舞した。

 決勝の舞台。大阪桐蔭の先発・森陽樹(はるき)投手(2年)からは三振をたくさん取られると覚悟していた。だが、ベンチで「大丈夫や」「粘って粘って」と声を掛け合った。

 東村選手自身は片道一時間半かけての通学。家でも自主練習を重ねてきた。終盤での好機をものにした一打に、上林健監督は「東村の努力の結晶です」とたたえる。

 試合後の閉会式。準優勝の盾を持ち、グラウンドを歩いた。一人ひとりの首からはメダルが下がっている。東村選手は、このチームは最高だ、と思った。味わった悔しさと楽しさを胸に、大学に進学して野球を続けるつもりだ。(編集委員・中島隆)

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