第106回全国高校野球選手権群馬大会(群馬県高校野球連盟、朝日新聞社主催)は27日は上毛新聞敷島球場で決勝があった。春の選抜高校野球大会王者の健大高崎が、昨夏の群馬大会で優勝した前橋商を破り、群馬の64校59チームの頂点に立った。全国高校野球選手権大会は8月7日に阪神甲子園球場(兵庫県西宮市)で開幕する。健大高崎は9年ぶり4回目の夏の甲子園に出場し、春夏連覇を目指す。
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(27日、第106回全国高校野球選手権群馬大会決勝 前橋商1-5健大高崎)
群馬の頂点に立った健大高崎の主将・箱山遥人(3年)は試合後のインタビューで、涙をこらえきれなかった。「ほんとに……苦しくて」。今春の選抜大会王者。他チームに追われる立場ながら、9年ぶりに夏の甲子園への切符を手にした。
春季関東大会では好機で打てず、「自分のせいで負けてしまった」と苦しんだ。チームに締まりがないと感じた時は、「嫌われてもいい」と覚悟して厳しい口調でチームメートに声を掛けた。
第1シードとして臨んだ群馬大会も、苦しんだ。3回戦では昨夏の準決勝で敗れた桐生第一に九回表に逆転を許し、その裏に追いついて延長に持ち込み辛勝。準決勝は6点リードで迎えた九回裏に前橋育英に怒濤(どとう)の猛攻を受けて追いつかれる、薄氷の勝利だった。
この日の試合開始前。箱山は円陣を組んで選手らに発破をかけた。「ここで負けたら、育英戦、桐一戦、粘って勝った意味が全てなくなる」
一回裏、自らの犠飛で三塁走者の加藤大成(2年)をかえして先制。同点で迎えた五回裏にも三塁走者の石垣元気(2年)を犠飛でかえして勝ち越した。
石垣と佐藤龍月の2人の2年生投手をリードして、相手に流れを渡さない。九回表2死二塁で最後の打者を三振に打ち取ると、その場に崩れ落ちた。
「何が正解かも分からず、自分と葛藤しながらやってきた。今日、これまでやってきたことが正解だと証明することができた」。主将としてチームを甲子園に導くことができた安堵(あんど)感。仲間とまだ野球を続けられるうれしさ。蓄積した感情があふれた涙だった。(中沢絢乃)
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前橋商のエース清水大暉(3年)は、涙が止まらなかった。「自分のせいで負けてしまって……」。絞り出すように、そう語った。
193センチ、93キロの大型右腕。2階から投げ下ろすかのような150キロ近い速球は、プロも注目する。しかし今大会、清水は本来の投球ができていなかった。準決勝までの3試合で14回を投げ、被安打は投球回数を上回る16。与四死球7と制球に苦しんだ投球は、不本意だったに違いない。
迎えた決勝。「ここまで自分の投球ができていない。持てる力を全部出す」と意気込んだ。しかし、決勝でも制球力は戻らなかった。
1点を追う七回が、苦しみ続ける清水の投球を象徴していた。四球と安打で走者を出し、さらに自らの暴投で1死二、三塁のピンチを背負った。
ベンチの指示は敬遠。満塁にした上での、相手の4番で主将の箱山遥人(3年)との勝負だった。「ここで相手の中心選手である箱山君を抑えないと勝利はないと判断した」と住吉信篤監督。
1―2からの4球目。捕手の要求と清水が投げたい球が一致した。
《内角高めに速球を》
だが、これが押し出し死球に。思わず天を仰いだ。続く5番にも押し出し死球。流れを失った。
同じ渋川古巻中の出身で左翼手の高橋一輝から「住吉監督の下で一緒に甲子園を目指そう」と誘われ、前橋商へ。その高橋一が泣き崩れる清水の肩に手を添えていた。
プロか、進学か。いまは何も考えられないという。ただ、住吉監督は「この悔しさを次のステージで生かして欲しい。清水ならできる」。大器の未来に期待を寄せた。(抜井規泰)
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