(27日、第106回全国高校野球選手権静岡大会準決勝 聖隷クリストファー3―2静岡)耐えるエース、あきらめずにくらいつく打者。聖隷クリストファーが名将の「頭とハートで勝つ野球」で一瞬の好機を逃さず、土壇場の逆転劇を生んだ。

 1点を追う九回表、先頭のジャコブソン・レイ選手(3年)が中前安打で出塁すると、代打の杉尾琉成選手(3年)が送りバントを決め、三回表以来の得点圏へ走者を送った。

 「お前なら絶対いける」。続く稲岡輝太選手(3年)に井上侑主将(3年)が伝令で上村敏正監督のメッセージを伝えた。思い切り振り抜いた打球は左翼手の頭を越え、同点に。勢いそのままに続いた伊藤玲泉選手(3年)の右越え二塁打で、逆転のホームを踏んだ。

 稲岡選手は同点に追いついた三回裏、三塁手として守備で痛恨のミスを繰り返した。先頭打者を一塁悪送球で出し、二死から再び一塁悪送球でリードを許していた。それでもエースの袴田行紀投手(3年)は「必ず打ってくれる」と冷静に投げ続けた。中盤からは変化球主体に切り替えてリズムを取り戻し、相手強力打線を4安打に封じた。

 「僕らには力はない。でも、苦しくても頭とハートを使い、最後まであきらめない」と稲岡選手。言葉通りノーシードから勝ち上がり、決勝へ。初の甲子園をかけ、最後の一戦に臨む。(大海英史)

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