パリ五輪の開会式でパレードする船の上で日の丸を掲げる日本の旗手、半井重幸選手=ロイター

 100年ぶり3度目のパリでのオリンピックが幕を開けた。「広く開かれた」をテーマに開催され、いくつもの「史上初」が重なる歴史的な大会となる。26日に競技場外のセーヌ川で行われた前例のない開会式は、新たな五輪の開会式の形を示した。

 開会式には200を超える国・地域から難民選手団を含めて約6800人が参加した。選手らは85隻のボートに乗ってパリ東部のオステルリッツ橋を出航。式典があるトロカデロ広場近くのイエナ橋まで、約6キロの「航海」を満喫した。

 航路はシンクロニシティー(共時性)、自由、平等、スポーツマンシップ、暗闇、連帯など12エリアに区分され、各沿岸でフランスの歴史や文化、芸術を紹介。老舗キャバレー「ムーラン・ルージュ」のダンサーによる「フレンチカンカン」、橋の上でのファッションショーなどが盛り上げた。ノートルダム大聖堂、ルーブル美術館といった名所も次々と登場し、さながら「花の都」の魅力を詰め込んだパレードとなった。

 雨が降る中、ボートは五輪発祥の地ギリシャを先頭に川を下った。選手117人が参加した日本選手団はヨルダン、カザフスタン、ケニアと同じボートに乗船。93番目に国名が告げられると、旗手を務めるフェンシング女子の江村美咲選手(25)=立飛ホールディングス=やブレイキン男子の半井重幸選手(22)=ダンサー名・SHIGEKIX、第一生命保険=らは沿岸の観客に手を振って応えた。選手たちは記念撮影するなどリラックスして船上の旅を楽しんだ。

 イエナ橋に到着後はトロカデロ広場での式典。ロシアのウクライナ侵攻、イスラエルによるパレスチナ自治区ガザ地区での戦闘など厳しい国際情勢が続くが、国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長は「今、我々は世界の平和を結び付ける祭典に身を置いている。オリンピアンは互いを気遣い、互いを尊敬し、連帯する。アスリートとともにスポーツの喜びを祝いましょう。未来を信じましょう」などと訴えた。

 ハイライトはライトアップされたエッフェル塔のきらびやかな光のショーの中で迎える聖火リレーのフィナーレ。サッカーの元フランス代表のジネディーヌ・ジダンさん、テニス全仏オープンを14度制したラファエル・ナダル選手(スペイン)らが聖火をつないだ。最後はルーブル美術館に近いチュイルリー公園に設置された聖火台に、柔道男子100キロ超級で五輪2連覇のテディ・リネール選手と、五輪の陸上女子短距離で金メダル3個のマリー・ジョゼ・ペレクさんの2人が点火。

 1900年、女性選手は最初のパリ大会で門戸が開かれて参加者が増え続け、今回史上初めて出場枠の男女同数が実現した。32競技、329種目を実施する今大会のチケットは、既に五輪史上最多の880万枚以上が販売済み。新型コロナウイルスの影響を受けて原則無観客だった3年前の東京大会からは一変し、大歓声が17日間の熱戦を後押しする。【パリ角田直哉】

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。