筑波大時代の吉田守一選手=松尾伸司さん提供

 パリ・オリンピックのハンドボール男子は27日、クロアチアとの予選ラウンド初戦を迎える。和歌山県紀の川市出身の吉田守一選手(23)は前回の東京大会に続き2度目の五輪となり、大舞台での活躍に期待がかかる。初心者だった吉田選手の素質を見抜いた県立那賀高校時代の恩師、松尾伸司監督(47)は「日本人でも勝負できるというところを見せてほしい」と願っている。【藤木俊治】

 「和歌山の宝になるぞ」

 8年前、偶然体験入部に訪れた長身の1年生と会った「衝撃」が今も忘れられないという。中学時代にバスケットボール部だった吉田選手は「全国大会を狙えるものを」と校内の運動部を探し回っていたそうだ。身長は190センチ近く、空手で鍛えたという体格に指導者として見ほれ、思わずスカウトした。日本代表の主力に成長した姿に「和歌山の宝どころか、日本の宝になった」。

練習中に部員たちへ指示を送る松尾伸司監督=和歌山県岩出市高塚の県立那賀高校で2024年7月19日午後3時5分、藤木俊治撮影

 入部するとすぐに頭角を現した。相手DFの懐に入る「ポスト」というポジションは、バスケットボールのボールさばきと、相手との接触がある空手の経験が生きるという。ゴールキーパーとして起用するか悩んだが、「球の扱いがうまく、体も強い。ぴたっとはまった」と、判断に間違いはなかったと確信している。

 2年生になると、競技を始めて1年ながら「気がつけば吉田中心のチームになった」。ウエートリフティング部に交じって取り組んだ筋トレの成果もあり、体はより強くなった。

 全国デビューは3年春の選抜大会。チームは2回戦で敗れたが、「DFをなぎ倒し、どんどん点数を重ねていた」。無名選手ながらその得点力が関係者の目に留まり、年代別の日本代表合宿にも招集されるようになった。筑波大1年だった20年1月に日本代表入りし、同年からはポーランドリーグでプレー。現在はフランスリーグのナントに所属し、最高峰の欧州で場数を踏んできた。

ハンドボール部員に指示を出す松尾伸司監督(左から4人目)。コートの柱には吉田守一選手のサインがある=和歌山県岩出市高塚の県立那賀高校で2024年7月19日午後3時44分、藤木俊治撮影

 松尾さんは、「ポストというポジションでヨーロッパの選手とも勝負できるところを見せて、ハンドボールをしている和歌山の中高生にも勇気を与えてほしい」とエールを送っている。

 クロアチアとの一戦は27日午後9時に試合開始予定。

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