(25日、第106回全国高校野球選手権大阪大会準々決勝 大阪桐蔭7―3早稲田摂陵)

 「打線がつながればいい」と単打を意識していた。

 五回2死二塁。大阪桐蔭のラマル・ギービン・ラタナヤケ(3年)が、代打で打席に立った。

 世代屈指の強打者だ。下級生から4番を任され、昨秋の明治神宮大会では逆方向へライナー性の本塁打を放つなど規格外のパワーを持つ。

 ただ、この大阪大会は不振が続いていた。タイミングが合わず、振り急ぐ場面が目立った。3回戦までスタメンだったが、2打席連続三振を喫して途中交代。4回戦以降、ベンチスタートだった。

 試合に出ない間は、出場する選手たちに水を渡したり、グラウンド整備を手伝ったり。サポート役にまわり、「チームでやっているので、勝つためにできることを一番考えている」。悔しさを押し込み、練習に打ち込んだ。

 この日の初打席。「投手に合わせるのが大事。来た球を打つことを意識した」と、低めの変化球をフルスイングし、完璧に捉えた。打った瞬間に柵越えとわかる打球が左翼席へ。高校通算33本目となる意地の特大アーチだ。目の覚める一発に、球場の観客からもどよめきが起こった。

 ここ数日、ラマルは暗い表情が続いていた。ベンチの選手たちからハイタッチで迎えられ、「自分の一振りで盛り上がってくれたのよかった。(西谷浩一監督からは)ナイスバッティングと言われました」と笑顔がこぼれた。

 西谷監督は「なかなか結果が出なくて、ちょっともがいていた」と明かす。「でも、一生懸命に練習をしていて、どこかで必ずやってくれると思った。他のものにはなかなか打てないラマルらしい1発」と賛辞を送った。

 準決勝の相手は、昨夏の大阪大会決勝で敗れた履正社に決まった。大阪桐蔭にとって最大のライバル。ラマルも昨夏、試合に出て涙をのんだ。

 自らのバットで勝利に導くためにも、この一発を復調への大きなきっかけとしたい。=シティ信金スタ(室田賢)

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