この日二人のトップランナーによる超ビッグな対談が実現した。
菅田将暉:
初めまして。菅田将暉です。
渡邊雄太:
渡邊雄太です、よろしくお願いいたします。
菅田:
うわ~!本当に迫力ありますね。
身長206センチと日本人離れした体格の渡邊雄太。NBAの舞台で活躍したトッププレーヤーに、今の心境を聞いてみると。
この記事の画像(9枚)渡邊:
緊張しています。
菅田:
普段緊張します?
渡邊:
試合の前とかは。でもこういうインタビューとかの方が緊張します。今回相手が相手なので…
菅田:
こちらこそ。
こうして始まった、フジテレビ系パリオリンピックスペシャルパートナーでアスリート応援ソング「くじら」を歌う、俳優・菅田将暉さんとバスケットボール日本代表・渡邊雄太のスペシャル対談。共鳴しあったトップランナー二人の想いを紹介する。
スラムダンクの定説が覆る 現代シュート論
対談に入る前に菅田さんがスリーポイントシュートに挑戦することに。
菅田:
打ち方も全然わかんないけど。雰囲気で打ってみます!
何も分からないと言いながら早速1本目。
菅田:
全然届かない。
2本目はバックボードに当たるもシュートは決まらず。続けて投げた3本目。何も分からないままスタートしたものの、あっという間に3本目で見事成功!
菅田:
こんなに投げられないんだと思いました。
渡邊:
シュートっていろんな理論が存在するので。イメージとしては、打つときに手のひら全部で、最後は2本の指がかかってる状態です。それこそスラムダンクって漫画あるじゃないですか。あれが出たのがかなり昔なので、あの時のシュート論と今のシュート論もいろいろ変わってると思うんですけど。スラムダンクの名言で『左手はそえるだけ』って。
菅田:
左手はそえるだけ。
今なお絶大な人気を誇る、バスケ漫画の金字塔「スラムダンク」。主人公・桜木花道がシュートの際のボールの持ち方としてたたき込まれ、勝負の局面で発した言葉こそが“左手はそえるだけ”。バスケ界の定説だと思われていたこのシュート理論だが…
渡邊:
あれも今は、そんなことないんですよ。昔はシュートを打つとき、自分の手がボールの真ん中でもう一個の手はボールのサイドにそえるっていう。
菅田:
そんなイメージですね。
渡邊:
今はどっちかというと(両手で)挟む感じに近いですね。
思わぬ形で定説を覆す衝撃の事実を知ったところで、満を持してスペシャル対談へ突入。
トップランナーたちの緊張と付き合い方
最初の話題は“緊張”
菅田:
さっき緊張っていう話があったので、緊張から話そうかなと思うんですけど、試合のときはどうですか?
渡邊:
僕は結構緊張はしていますね。コートでプレーし出したらすぐ忘れるんですけど、試合前は結構緊張しているので。大きい声出したりとか、そういう感じでちょっと紛らわすというか。
菅田:
意外と俳優あるあるでもあって、本番前に『あー!!』とかみんな息抜いてというのがあるんですよ。緊張とか整理する一息になるんですかね。好きですか?緊張するの。
渡邊:
好きじゃないです(笑)できるなら緊張せずに試合とかやりたいですけどね。割とアスリートの中でも繊細な方なんじゃないかと思っていて、よく友達と話をするんですけど、自分はスポーツ選手向きじゃない性格ですね。
菅田:
選手向きじゃないってどういうことですか?
渡邊:
思っている以上にビビりだったりとか、昔は本当に泣き虫で。親からもよく言われるんですけど『よく雄太がアメリカに行ったよな』って。
“孤独”と戦い続けたアメリカでの挑戦
小学校1年生のとき本格的にバスケットボールを始めると、高校時代は香川県の強豪・尽誠学園のエースとして全国高校選抜優勝大会(ウィンターカップ)で2年連続の準優勝に貢献。
この頃抱いた思いが…「アメリカ行く」という決心だ。高校3年生になってすぐのことだと言う。
渡邊は高校卒業後、本場アメリカへバスケ留学。ジョージワシントン大学に在籍し活躍を見せるものの、NBAからのドラフト指名はなかった。
言わずと知れた世界最高峰リーグ・NBA。
その大舞台を目指しひたむきな努力を重ねた結果、2018年メンフィス・グリズリーズと、チームに在籍したまま下部組織の試合に出場できる『2ウェイ契約』。
田臥勇太選手以来、日本人2人目のNBAプレイヤーとなった。
そして2021年にはNBA1年目から一番の目標としていた本契約をトロント・ラプターズと結ぶ。
その結果、計6シーズンに渡ってNBAのコートで輝きを放った渡邊だったが、人知れず心の中で対峙してきたものがあったという。
渡邊:
僕、結構一人でいることは割と好きな方なんですよ。でもやっぱり孤独を感じることがあったので苦労はしました。
菅田:
もう(日本に)帰ろうかなみたいなことはありましたか?
渡邊:
思わないようにしていた部分があったので、それを思い出したら限界がきていたと思います。たぶん無意識の中で、自分でそこにちゃんと蓋はできていた気はします。
渡邊:
孤独を感じることはありますか?
菅田:
孤独感ですか?逆に孤独じゃないって何ってことですよね。役者業も基本一人ですし。でもある意味いいことだと思うようにしています。別に仲間と一緒にみんなでっていうのが嫌いなわけじゃないけど、なんか一人でやることにも意味あるよなと結構考えたりします。誰もいないところを行く感覚ってちょっと楽しかったりもしますよね。
渡邊:
そこを楽しめているのは僕もあったので。それがないとたぶんしんどいですよね。
アメリカで変化していった“仲間”の概念
誰もが憧れる世界最高峰の舞台で身も心も極限の戦いを続けていた渡邊。そんな過酷な戦場で一変したのが「仲間」という概念。
渡邊:
NBAで試合に出られるか出られないくらいの立場にいたときに、その境遇が共感できる人って僕と同じ立場の人なんですよ。試合に出られる人はわからないので、僕たちの気持ちは。でも試合に出られない人は共感できるんですけど、倒さなきゃいけないのはこの共感できる仲間たちなんですよ。この人たちから僕はプレータイムを奪わなきゃいけない。まずは同じレベルにいる選手を、チームメートだったり仲間だったり本当に共感できる友達だったりっていうのに、その選手より自分が上に行かなきゃ自分は試合に出られないというところが、結構僕の中では大変でしたね。
菅田:
切磋琢磨っていうと聞こえはいいんだけど、実情はすごく複雑ですよね。友達の俳優で仲野太賀っていう俳優がいて、友人ですけど10代の頃から同じオーディション受けて僕が受かってとか、その映画が公開するまでは仲良かったんだけど、なんかそれ以降ちょっと仲悪くなって…如実にどっちが選ばれるかみたいな世界ではあるじゃないですか。そういう刺激は大事ですよね。
渡邊:
大事ですよね。アメリカに行って僕が一番本当に衝撃だったのが、普段仲のいい友達でずっと2人で一緒に行動するような人達がいて、でも練習になってその2人が違うチームに分かれたんですよ。そうなったときに、本当に殴り合いが始まるんじゃないかぐらい、バチバチやり合っていて。日本ではない光景というか、仲いい人に対して遠慮しちゃうじゃないですけど。本当にこの2人実は仲悪いのかなと思って、練習終わったらまたいつものように2人でずっとしゃべっていて。
菅田:
いい関係だな~
渡邊:
これが本来のお互いを高め合う仲間なのかなってアメリカに行ってすごく感じたので、“仲間”という言葉の意味がアメリカに行って変わりましたね。
“負けたら代表引退“日本バスケ界のための強い覚悟
そして渡邊はアメリカで得た唯一無二の“財産”を今度は日本バスケ界へ還元する。
渡邊:
日本のバスケに当時足りなかったところは絶対にそこだったので。日本ってやっぱ上下関係があったりするので、(年齢が)下のものは上のものにやりにくいじゃないですけど、ちょっと気を使いながら練習中プレーしないといけないみたいな。そういうのはなくさないといけないなと思って。日本代表とかで日本に帰ってくるときはなるべくそういうのをなくして、逆に僕に気を遣ってるとか、先輩に対して気を遣っている人に対してはちゃんと注意して。そうじゃないとチームとして強くなっていかない。
“日本代表を強くしたい“そんな思いと共に日の丸を背負ってきた渡邊雄太。それでも東京五輪では3戦全敗、国際大会ではいまだ結果を残せずにいた。パリに向け悪い流れを断ち切りたい。決意の強さは並大抵のものではなかった。
2023年に行われたパリ五輪の予選を兼ねたワールドカップ。その直前のことだった。渡邊は突如マスコミの前でこう語り始めた。
「自分が今リーダー的な立場として、今回も連敗するような事があれば、自分は代表のユニホームを脱ぐつもりでいます」
“パリ五輪に行けなければ代表を引退する”この言葉に込めた“覚悟”とは。
渡邊:
僕は代表選手としてずっと勝てていなかったので、選手である以上チームを勝たせないといけない。もちろん一人ではできないですけど。バスケって世代交代がうまくいかないと、ずっとダメな時期が続くことが結構多かったりするので。僕が代表選手でいたいって言い続ける以上、たぶん僕は代表選手でいさせて貰えると思うんですけど、それって若い選手の成長の場を奪ったりしているところもあるので。
菅田:
それはまた悩ましいところですね。そこまで考えるものですか?
渡邊:
考えました。このときは本当に考えました。勝てていないのになんでこのユニホームを着て自分がプレーをしているんだろうって。
菅田:
だったら代謝というか、新しい循環を?
渡邊:
はい。
菅田:
それはまたすごい悩みですね。
渡邊:
僕は本当に頑固なので、一度決めたことは絶対に曲げないというか。最初身内というか代表関係者だけに話して『いやいや』という感じがうっとうしかったので公にしてやろうって。
菅田:
マジだからなって。
渡邊:
冗談で言っている訳じゃないからっていうのを、メディアの皆さんの前で言って発信してもらうことで、僕の本気度を。
菅田:
それは伝わるし、自分も引き締まりそうですよね。
そんな覚悟を持って挑んだワールドカップで渡邊は躍動。
全5試合にスタメン出場、チーム2位の1試合平均14.8得点をマークするなど日本代表の48年ぶりの自力での五輪出場に大きく貢献した。
渡邊:
結構自分に対してもプレッシャーをかけた部分があったので。本当にそろそろ勝たないとダメだろっていう。結果はパリ五輪に行けるようになったので代表はもう少し続けようかなと思っています。
菅田:
よかったです、いろんな意味で。やっぱ意思を伝えるって周りに伝染しますもんね。
試練を乗り越えて最強の“仲間”と目指すのは…
渡邊雄太が挑む2度目のオリンピック。しかし開幕を直前に控えた6月、左ふくらはぎに肉離れを負ってしまう。またしても試練は渡邊に降りかかる。
しかしこれまで幾多の試練を乗り越え新たな歴史を切り開いてきた。
史上最強のチームメートと共に、日本男子バスケ初のオリンピックベスト8へ。
渡邊:
予選突破は簡単なことではないですし、口で言うほど生易しいものではないですけど、全員がそれをできると信じているので、予選突破・8強を目指してやっていけたらと思っています。
菅田:
みんなで見てます!思いっきりやってきてください!
渡邊:
頑張ります!
東京五輪のリベンジを果たし、自力でパリ五輪出場権を勝ち取った2023年夏のワールドカップ。それ以上に熱いバスケフィーバーで、2024年の夏も日本を盛り上げる姿が待ち遠しい。
『すぽると!』
7月21日(日)23時15分
フジテレビ系列で放送
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