(19日、第106回全国高校野球選手権山梨大会準々決勝 日本航空4―3帝京三)

 1点を追う九回裏2死三塁。日本航空の2番・金子竜馬選手(3年)は、2球で2ストライクに追い込まれた。後がない。

 「何でもいいから、泥臭く塁にでる。奇跡を起こす」。3球目の外のボール球に食らいつくと同点の右前打に。一塁を駆け抜けると雄たけびを上げた。

 続いて打席に入った弟の金子優馬選手(3年)も「俺も打たなきゃ。死んでも後ろに回す」。初球を左前へ運んだ。「頭に血が上っていたけど、『後ろにつなげろ』という竜馬たちの声が聞こえて、冷静になれた」。後続もつながり2死満塁になったが得点できず、延長タイブレークに突入した。

 2人は同学年だが双子ではない。竜馬選手は4月生まれ、優馬選手は2月生まれだ。幼稚園の時に野球を始め、一緒に続けてきた。

 普段の練習では、プレーなどを巡って「罵倒し合うほど」(豊泉啓介監督)のけんかもしばしば。だが、その真剣な姿がチームに刺激を与えてきた。

 大会前、竜馬選手は「兄弟だから本音で言い合える」。優馬選手は「けんかじゃない。必死さを見せるとチームにスイッチが入る。それぐらいかけている」と話していた。

 竜馬選手は捕手、優馬選手は三塁手。この日もピンチで内野手が集まる度に「大丈夫、大丈夫」と声をかけ続けた。

 1点差に迫った直後の十一回裏2死二塁、優馬選手は四球を選び後ろにつなぐと、次打者の適時打で同点に。自身は三塁へ進み、その後、押し出しの四球で決勝の本塁を踏むと、跳び上がってチームメートたちと抱き合った。

 2人は帽子のつばの裏に「奇跡」と書いていた。「奇跡を起こさないと甲子園には行けない」。豊泉監督の言葉だ。2人は「奇跡を起こせた」と喜んだ。

 「甲子園で双子じゃない3年生兄弟の姿を見せて、日本航空の名前を全国にとどろかせたい」。夢に一歩近付いた。(豊平森)

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