(19日、第106回全国高校野球選手権三重大会2回戦、昴学園1―2海星)

 「行けるぞ」。1点を追う九回表1死、最後の打席で四球を選んだ昴学園の青木大斗(ひろと)主将(3年)が一塁上で声を上げた。次打者の内野ゴロで二塁アウトになったが、その後も最後の打者に駆け寄って「気持ちで負けるな」と声をかけ続けた。

 激動の2年半だった。1年の夏、チームには上級生が3年生6人、2年生2人の計8人しかいなかった。2年の夏は17年ぶりの初戦突破にとどまった。しかしその秋、白山を夏の甲子園に導いて「日本一の下克上」と呼ばれた東拓司教諭(46)が監督に就任。厳しい指導のもと新チームは躍進を続け、今春の県大会では名門の三重や宇治山田商を破って初の3位になった。

 シード校として臨んだこの試合。エースの河田虎優希(こうき)投手(2年)は、初戦の緊張から球にいつもの力がなく、一回に四球や味方のミスも絡んで2点を先取された。「変化球主体に切り替えよう」と、捕手の青木主将のリードで二回以降は追加点を与えず、五回以降は安打も許さなかった。安打数では相手を上回ったが、「雰囲気にのまれた一回がすべてだった」と青木主将はくやんだ。

 「改めて夏の怖さを思い知った。新しい昴の土台を作ってくれた3年生には感謝しかない」と東監督。青木主将は、大学に進学しても野球を続けるつもりはないという。「これまでに経験のない厳しい1年間だったが、ここまでできるということを監督が教えてくれた。これからの人生、野球だけでないということも教わった」と話す。「下克上第2章」は後輩に託し、涙をふいた。(本井宏人)

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