(16日、第106回全国高校野球選手権東東京大会3回戦 日体大荏原3―1足立学園)
足立学園の「代打の切り札」、加藤大雅(たいが)(3年)の最後の仕事は伝令だった。
2点を追う九回表、2死満塁。長打が出れば逆転のチャンス。加藤は、ベンチ裏で「出番か」とそわそわし始めた。
だが、次打者は長打が期待できる2番打者、山本陽樹(3年)。攻撃のタイムを取った塚本達也監督の指示は、「伝令に行け」だった。
すぐに気持ちを切り替え、打席の山本のもとへ走った。「開き直って打ってくれ」と思いを伝えた。山本の打球は右翼へ。「越えろ」。打球はむなしく、右翼手のグラブにおさまった。
高校生活、最後となったこの日の試合も、加藤はいつもと変わらなかった。ベンチの端に立ち、赤いメガホンで野手を鼓舞。守備が終わって戻ってくる選手を、ベンチから飛び出して迎えた。そして、終盤は代打に備えて、黙々と素振りをした。
塚本監督は「チームの盛り上げ役で、愛されキャラ。試合に出られなくても腐らずにやってくれた」と加藤の姿勢を高く評価した。
17日は父裕之さん(52)の誕生日だった。朝、「誕生日記念にヒットを打つ」と約束してきた。果たせなかったが、「大きな体に育ててくれた。これから恩返しをします」と笑った。=大田(中村英一郎)
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