プロ初優勝を果たした石井さやか選手=大阪市で2024年4月14日、長野宏美撮影

 国際テニス連盟(ITF)の女子ワールドツアーW35「富士薬品セイムス・ウィメンズカップ」が9~14日、大阪市のITC靱テニスセンターであり、女子シングルスで18歳の石井さやか選手(ユニバレオ)がプロツアー初優勝を果たした。

 父はプロ野球DeNAの石井琢朗コーチ(53)。石井選手がプロ転向を発表した2023年3月の記者会見には父も同席した。

 それから1年あまり。「やっと優勝できた」。石井選手は試合後のインタビューでほっとした表情を見せた。ITFツアーはWTA(女子テニス協会)ツアーの下部大会にあたり、世界で活躍する選手の登竜門に位置づけられている。

 今大会の会場は21年の全日本ジュニア18歳以下女子シングルスで優勝するなど、思い出の地。世界ランキング371位の石井選手は決勝で265位のカナダ選手を6―1、3―6、6―3で破り、「この場所で優勝できてうれしい」と観客に向けスピーチした。

プロ初優勝を果たした石井さやか選手=大阪市で2024年4月14日、長野宏美撮影

 姉の影響で5歳の時にテニスを始めた。水泳も習っており、将来の夢はテニスか水泳の選手だった。テニスに本格的にのめり込んだのは小学校低学年を過ごした広島。「戦うのが好きで、試合をする機会が多かったから」だという。

 9歳の時にウィンブルドンを現地で見て「ここでプレーしたい!」と思った。中学進学を前に父から「プロの世界は甘くない。覚悟はあるのか」と何度も聞かれた。石井選手はここで決断する。私立の青山学院初等部(東京都渋谷区)から公立の中学校に進む。そのまま大学まで進学する選択肢もあったが、「試合にもっと出て、テニスをがんばりたい」と決意した。

 21年9月には錦織圭選手らが育った米フロリダ州のIMGアカデミーに練習の拠点を移す。23年の全豪オープンジュニアで単複ベスト4に入るなど、実績を重ねていった。

 プロ入りから1年が過ぎたが、ジュニアとの大きな違いは何か? 石井選手は「プロの大会では自分がどんなにリードしていても相手はタフで追い上げてくる。メンタル面のコントロールが大事」だと実感している。

プロ初優勝を決めた試合でバックハンドを打つ石井さやか選手=大阪市で2024年4月14日、長野宏美撮影

 負けた試合の後、父に相談することもあるという。「『勝たなきゃだめ』と考え出すとネガティブになるけど、『勝ってやる』と前向きに考えるといいと最近、言われました」。

 身長は175センチ。「(174センチの)父は超えました!」と明るく話す。

 約2カ月前から南アフリカ出身の2人のコーチが交代でツアーに同行するようになった。今大会を担当したクリフ・ラバ氏(38)は「さやかの強みはパワー」だと話す。決勝でもサーブとストロークの力強いショットが要所で決まった。さらに、「教えるのが難しいアスリートの素質がある」と言う。それは「意志の強さ」と「地に足が付いていること」。プロ野球選手だった父と接し、「自然に身についたのかもしれない」という。

 石井選手の今年の目標は4大大会の予選出場。それには200位前後に上げる必要がある。初タイトル獲得で弾みになった。石井選手は「自信がついて、これからもっといいプレーができると思う」と話した。【長野宏美】

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