(13日、第106回全国高校野球選手権西東京大会、2回戦 西0―7八王子 七回コールド)

 最後の夏、スタンドから仲間たちを見つめる八王子の佐々木大翔(3年)に悔いはなかった。ここで今、こうして応援出来ているのも、支えてくれた仲間のおかげだから――。

 甲子園を目指し、八王子に入った。だが、1年生の夏、庭でバットを振っているときに熱っぽさを感じた。新型コロナウイルスだった。発熱に加え、腰と背中が強烈に痛んだ。立つこともままならなくなり、入院した。

 すぐに復帰できると思ったが、なかなか症状は落ち着かなかった。原因がわからず、時間だけが過ぎていった。

 練習もできなければ、チームのために何かを手伝うことさえできない。部活に戻っても仲間に受け入れてもらえるのか、入院が長引けば長引くほど不安になった。「もう野球、無理かも」。心が折れかけた。

 そんなとき、同級生からのメッセージに救われた。「みんな待ってるから」。うれしくて涙がでた。

 2年になる前の3月、ようやく練習に復帰した。初めはグラウンドの脇でチームメートの様子をみながら筋トレしたり、歩いたりするので精いっぱいだった。でも、「待ってるから」という言葉を思い出すと、頑張れた。

 だが、最後の夏の大会、ベンチメンバーから外れた。練習試合で結果を残せなかったふがいなさ、思い描いたような3年間を過ごすことができなかった悔しさ――。色んな感情が渦巻いた。

 ベンチメンバーに選ばれなかった3年生が出る、6月末の引退試合。「楽しめー」。チームメートはそう声をかけてくれた。あきらめかけてた自分がここまでこられたのは、仲間のおかげ。「やりきったな」と初めて思えた。

 この日、チームはコールド発進。快音が響くたび、佐々木の笑顔が弾けた。もっともっと長く、仲間を支えたい。「楽しめー」。佐々木は叫んだ。=スリーボンド八王子(西田有里)

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