(12日、第106回全国高校野球選手権千葉大会2回戦、銚子商8―9千葉明徳)
試合後の整列。勝ったチームが大泣きしていた。あきらめず、つかみ取った勝利だったから。
4点を追う九回裏。八回まで投げた千葉明徳の先発、尼形知樹(3年)は祈るように仲間の攻撃を見つめた。
四回まで1人の走者も許さない完璧な投球。しかし、4点リードの五回表の守り。雨でぬかるんだマウンドに足を滑らせ、4連続四死球などで5失点。逆転を許していた。
これが最後の攻撃――。ベンチは誰ひとり諦めた表情はしていない。観客席の応援にも力が入る。「逆転しよう、逆転」。尼形はベンチから身を乗り出し、叫んだ。
大声援の中でも尼形の声は通った。無死一、二塁で4番打者の水元悠斗(3年)が応えるように適時打を放つ。その後も3連打などで同点に。
そして、そのときは来た。1死二、三塁で打席にはこの日2安打1打点の丸山晃生(3年)。3球目を中堅へ運んで犠飛とし、三塁走者が生還した。
ベンチから選手たちが飛び出してきた。尼形も顔を真っ赤にして両手で拳を握りしめていた。五回の逆境でも笑顔を心がけた尼形だったが、九回裏は終始、目に涙をためていた。「仲間を見たら涙ぐんじゃって。点を取られ申し訳ないという気持ちもあるんですけど、3年間を思い出した」
怒られ、落ち込んだとき声を掛けてくれた仲間たち。みんなで挑む最後の夏。だから、うれしかった。「明日も同じ仲間と野球ができる」
目標は甲子園。最高の夏は、まだ続く。=県(杉江隼)
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