(10日、第106回全国高校野球選手権千葉大会1回戦、佐倉6―5市千葉)

 主将の折れない心にチームは奮い立った。

 市千葉の主将、大木乃吾(だいご)(3年)は3点を失った六回表の守備で両足のふくらはぎがつった。つりやすい体質で、栄養補給やストレッチなど対策もしてきたはずだった。「こんな時に試合を止めて申し訳ない」。5点差になったが、痛みをこらえ、仲間を気遣った。

 その裏。先頭打者は大木だった。打席に入る前、本多二郎監督に背中をたたかれ、気合が入る。本多監督がいつも言う、流れが止まった後の先頭という難しい場面。「ここで出たら流れが来る」

 5球目。内角の直球を振り抜き、打球は三遊間を破った。一塁上で拳を突き上げた。だが、すぐ主将の姿に。「ここしかないぞ」と次打者の奥山大馳(だいち)(3年)に声を掛けた。

 続く奥山は二塁打を放ち、後続の打者も奮起し、2点を返した。奥山は「自分はメンタルは弱いけど、(大木が)良い流れを作ってくれたので落ち着いて打席に入れた」。

 九回裏に大木の犠飛であと1点まで迫るも力尽きた。この日、難しい状況で1本は出せた。「成長できたかな」と思う。一方で、最後の打席は悔いが残る。「同点まで2点必要な場面で1点しかとれなかった。もっと勝ちたかった」

 悔しかった。でも、最後まで主将の仕事を全うすることを心がけた。「仕事はまだ終わっていない。後輩が泣いているのでなぐさめないと」

 そう笑って、球場をあとにした。=県(杉江隼、芹沢みなほ)

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