第106回全国高校野球選手権群馬大会は9日は1回戦9試合があった。吾妻中央は市前橋に、太田東は富岡に接戦で勝利。この日までに1回戦27試合が終了した。9人の選手がそろわず複数校で結成する「前橋西・四ツ葉学園・玉村・尾瀬」の4校連合と「榛名・下仁田・藤岡工」の3校連合は、ともに初戦で敗れたが、最後まで戦い続ける姿をスタンドは大歓声でたたえた。13日に2回戦6試合が予定されている。

 この日は前橋西・四ツ葉学園・玉村・尾瀬の4校連合も登場。やはり平日は各校で練習し、チームが集まって練習できるのは土日のみだ。玉村の鈴木来樹(3年)は、4校連合の主将を頼まれた時は「正直大変そうだな……」と尻込みした。

 しかし腹をくくって主将をやると、「自分がチームを作っている感じがして面白かった」。この日は三回に安打を放ち、勢いづいたチームは一挙3得点。一時は逆転した。しかし三回裏に再びリードを許すと点差を詰められなかった。試合後、鈴木は「チーム全員が一つになって全力プレーできたから後悔はない。連合での野球が楽しかった」。(中沢絢乃)

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 1校単独で9人の選手をそろえることすらできない連合チームは、口汚い言葉で表現するなら、「寄せ集め」かもしれない。だが、榛名・下仁田・藤岡工の主将・関口空(榛名・3年)は、このチームを愛していた。

 同級生たちに「試合に出てくれ」とお願いして人数をそろえた単独チームではない。たとえ弱小でも、野球に打ち込みたいという情熱を持つ仲間が集ったチームだ。6月14日の組み合わせ抽選会。関口は「僕たちは団結力が違います。底力を見せたい」と語っていた。

 中学卒業と同時に、野球はやめるつもりだった。だが、最後の大会で惜敗し「まだ戦いたい。試合に出たい」と決意した。「1年から試合に出られるかもしれない」と部員の少ない榛名に進学。安中市内の自宅から山を二つ越えて通う学校まで、自転車で小一時間かかるが、苦ではなかった。

 3校連合は平日は各校で独自に練習し、全員が集まれるのは土、日曜日だけ。車で40分かかる藤岡工のグラウンドまで、いつも母恭子さん(41)が送り迎えしてくれた。そんな母や支え続けてくれた家族に「笑顔を見せたい。勝利を贈りたい」と語っていた。高校で1度も味わっていない公式戦初勝利が目標だった。

 2点を追う五回。自慢の団結力が光る。安打を足がかりに、相手守備の乱れを突き、同点に追いついた。関口が同点のホームに滑り込んだ。

 だが、直後に突き放された。その後も粘りを見せたが、及ばなかった。

 試合に敗れ、涙で言葉が出ない関口が、途切れ途切れにこう語った。「悔いは残るけど、このチームでやれて良かった。最高のチームです」

 掲げていた二つの目標。公式戦の初勝利は、かなわなかった。だが、もう一つの約束は果たした。スタンドで声をからした両親ときょうだいは試合後、こうたたえた。

 「試合中の笑顔が最高でした」(抜井規泰)

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 決勝点を与えてしまった富岡のエース黒沢丈智は試合後、涙が止まらなかった。七回まで無失点に抑えていた先発の石井我空の足がつり、八回から緊急登板。その初球を右中間にはじき返された。三塁打。さらに四球を与え、1死一、三塁となったところでスクイズを決められた。スコアボードに0が並び続けた試合の、これが決勝点となった。

 2年生の背番号「1」。止まらない涙は、悔しいからではない。「ただただ、先輩たちに申し訳なくて。情けなくて……」。帽子をぎゅっと握りしめ、ふるえる声でそう語った。(抜井規泰)

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 緑色のポロシャツを着た生徒やユニホーム姿の野球部員に交じり、真っ黒な学ランを着て応援する女子の姿が目立った。東農大二の応援団員だ。

 10人中8人が女子。創設60年超。十数年前に女子団員が誕生した。名物は大根を両手に持って踊る「青山ほとり」。得点するたびに披露され、春夏8回出場した甲子園でも有名だ。

 高崎工との1回戦は七回コールド勝ち。「大根がぼろぼろになっちゃった」。団員が心配するほど度々登場した。

 応援団を率いる清水毬妃団長(3年)は中学時代にインターネットで試合を見て応援団にあこがれるようになったという。女子団員が誕生してからチームは甲子園に出場していない。「私たちの応援で甲子園に連れて行くくらいの気持ちでやっている。頑張ってほしい」

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