(9日、高校野球秋田大会2回戦、能代1―3秋田南)

 七回1死三塁。能代のエース市川翔大投手(3年)が投げ誤った。1ボールでの2球目。「内角への直球が真ん中に入ってしまって……」。中堅への三塁打を喫し、野手のミスも絡んで打者も一気に生還。勝ち越された2点は重かった。

 1年生の春からずっとベンチ入りしてきた。最初は三塁手。2年生になると捕手をやり、救援登板も。様々な経験をする中で、先輩の夏にかける姿を一番身近に見てきた。「その思いを背負って戦いました」。新チームになってつけた背番号1が奮闘した。

 四、五回と三者凡退に抑え、ガッツポーズが出たのは六回だった。3四球と乱れて2死満塁。ここで三塁寄りのゴロを遊撃手の白鳥武蔵選手(3年)がさばいて二封にしてくれた。

 「雨でグラウンドも悪かったのに。普段からしっかり練習してくれていたんです」

 九回は次打者席でゲームセット。「練習でやってきたことを出せないこともあったけど、一球一球、投げているときも仲間が声をかけてくれて」。目にこみ上げてくるものを抑えきれなかったが、話すうちに笑みも浮かんできた。「改めて野球って楽しいなと思えました」(隈部康弘)

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