(7日、第106回全国高校野球選手権福岡大会3回戦 小倉1―3豊国学園)

 六回、小倉の攻撃。柳屋颯(はやて)選手(3年)の打球が三塁手の頭上を越えた。左翼手が処理に手間取る間に、二塁へ。空に向かい、両手を広げた。一緒に戦う「仲間」への思いを込めた。

 仲間は岡部侑馬さん。中学時代からの友人で、一緒に小倉の野球部に入った。左翼のレギュラーを目指して競い始めたが、その夏、病気で亡くなった。ショックだったが、「侑馬のためにも」強くなろうと決めた。

 昨夏の大会後、みんなで彼の自宅を訪れ、母親の知佳子さんに伝えた。「侑馬を『21人目のメンバー』として、背番号21をベンチに迎えたい」。それから、知佳子さんが背番号を手縫いしたユニホームを、試合のたびに飾るようになった。

 一緒に頂点へ――。そう誓い、臨んだ今大会。柳屋選手は左翼手、3番打者で出場。3日の初戦は二塁打2本を含む3安打2打点、この日も安打を放った。活躍のたびに両手を広げ、「侑馬の頭文字『Y』」を表現した。

 試合に敗れ、「『もっと打てよ』って、あいつに思われたかな」と振りかえり、「勝って、笑って、一緒にもっと先まで行きたかった」。観客席から見守った知佳子さんは感謝した。「チームの一員として、こんなに息子を思ってくれるなんて。侑馬もきっと、試合を見ていたはず」(太田悠斗)

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