(7日、第106回全国高校野球選手権大阪大会1回戦 同志社香里10―4港) 

 港は一回裏、幸先良く1点を先取。しかし、七回表が終わった段階で8―1と、あわやコールド負け寸前にまでなった。

 他の投手がブルペンで投げるのも見える。だが、エース西川春道投手(3年)はマウンドを譲るつもりはなかった。

 以前は考えられないことだ。

 かつては監督から交代を告げられると、「後ろもおるしな」とすぐに応じていた。

 だけど練習に打ち込むうちに、自分で試合を作る面白さを覚え、マウンドを任せてもらえるうれしさを感じるようになった。

 俺が抑えて勝ちたい。意志が強くなるほど、技術も伸びていった。

 早川宏行監督は「2年の秋には、『マウンドから降りたくない』と伝えるほどエースの自覚が出てきた」と振り返る。

 この試合、西川投手は早川監督から「最後まで行くぞ」と発破をかけられ、仲間からは「お前しかおらん」と励まされ、粘り続けた。

 暑い日差しの下、約3時間に及ぶ試合。勝てずに、もちろん後悔はある。

 でも、ストライクを取ったときの歓声。三振を奪う気持ちよさ。疲れも忘れ、「今日が一番おもろかった」と言える試合になった。

 本当は今日で野球をやめるつもりだった。だけど、また歓声を浴び、打者と駆け引きをする面白さを味わえるような試合をしたい。計164球、マウンドを譲らずに投げきった後、残った思いだ。(西晃奈)

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