(6日、第106回全国高校野球選手権兵庫大会1回戦 夢野台―豊岡総合)

 左利きじゃダメですか――。

 今夏の高校野球兵庫大会で、6日に初戦を迎える夢野台の城戸柾輝主将(3年)は「左投げの捕手」だ。

 中学生の頃からポジションはセンターだった。昨秋まで一度も捕手をしたことはなかった。

 昨年9月中旬、秋の大会で敗れた後に前原克泰監督から突然、提案された。「捕手をやってみないか」。前原監督は城戸主将について「肩が強く、野球のことをよく知り、的確な指示ができる。外野手よりも捕手の方が向いている」と考えていた。

 「左投げなのに、捕手をしてもいいのか。困惑しました」と城戸主将は振り返る。考えた末に、挑戦してみることにした。

 最初はボールを後ろにそらしたり、うまく捕球できなかったりするミスが続いた。だが練習を重ねるうちに上達した。約1カ月後、「このまま捕手でもいけるかもしれない」と感じた。

 冬の間は、ユーチューブでプロ野球の捕手の動画を何度も見て研究した。

 次に練習したのは、三塁への送球だ。右投げの捕手が一塁に投げるのと反対の動き。捕球したあと、しっかりとステップして、体を三塁方向にひねらないと力強い送球ができない。練習試合では相手チームに三盗をよく狙われた。だが、ここも練習を繰り返した。

 次の課題は、本塁でのクロスプレーだった。三塁から本塁へ滑り込んでくる走者へのタッチは、左手にミットをはめている右投げと比べてどうしても遅れてしまう。何度も練習をしたが、「どうしても右投げにスピードでは勝てない。もう仕方がない。割り切ろう」と決めた。

 反対に、左投げのメリットが分かった。右投げよりも一塁へ投げやすいため、捕手からの牽制(けんせい)で一塁走者を刺せるようになった。二塁送球は、左腕を振りづらい右打者ばかりではないから関係ないと思えた。

 捕手になってから約10カ月。「左投げの捕手だ」と試合前、相手校から驚かれることにも慣れた。「ほかの捕手と比べたらまだ未熟だけど、周りをよく見て仲間へ多くの指示ができるようになった。今ではもう、左投げのハンディを感じることはなくなりました」と言った。チームの目標はベスト16だ。(森直由)

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