「2年前の感触は覚えていなかったけど、みんなと行進できて楽しかったです」

 晴天に恵まれた6日、選手らが緊張した面持ちで行進する。第106回全国高校野球選手権宮崎大会の開会式。一人のマネジャーが連合を組む2校の先頭に並んで立ち、プラカードを持って行進した。

  • 1年9カ月間マネジャー1人、待ち焦がれた新入部員 2年ぶり大会へ

 宮崎県立飯野高3年の伊藤梨亜菜(りあな)さん(17)。2年前の夏、3年生4人と他の部活からの応援組で出場したが、3年生が引退した後、選手がいない野球部になった。

 マネジャー1人で部活を続けるのか――。永井孝幸監督(47)の言葉に頭をよぎったのは、「3年間続ける」という両親との約束。1965年の創立時からという野球部を途絶えさせたくない思いだった。「やります」。永井監督に告げた。

 グラウンドの草むしりや部室の整理などを続けた。2年生の春の部活動紹介では新入部員ゼロ。しかし、今年春に1年生の上村礼恩(れおん)さん(16)が伊藤さんの教室を訪ねてきた。野球部のことを知り、進学してきたのだという。

 2年生の新入部員らも含めて選手6人とマネジャー3人に増えた野球部。1年9カ月ぶりに練習が始まり、伊藤さんは選手らとグラウンドを駆け回った。「一つ一つが最後じゃないかと重みを感じていた」

 夏の大会は、同じく部員不足の県立高城高と連合チームを組んだ。初戦は8日の予定だ。伊藤さんは記録員としてベンチには入らず、スタンドから応援する。「最後の最後までできることをやりきりたい」。待ちに待った夏が始まった。(中島健)

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