練習で選手らに語りかける松平の島田泰嘉監督(中央)=愛知県豊田市の同校で2024年7月4日午後5時50分2024年7月4日午後5時50分、塚本紘平撮影

 第106回全国高校野球選手権愛知大会(愛知県高校野球連盟、朝日新聞社主催)は6日、1回戦に松平が挑む。同校は昨秋以降、部員不足で他校との合同チーム編成を余儀なくされたが、島田泰嘉(たいが)監督が地元の中学に声をかけて部員を集め、単独チームでの出場を実現させた。監督の熱意に応えようと、選手たちは初戦突破を目指す。

 初戦を控えた同校グラウンド。チーム練習後、日が暮れても残って自主練習をする3年生を見つめながら、島田監督は「あの2人に勝たせてあげたい」とつぶやいた。

 最後の夏を迎えた3年生は、新粥(しんがい)雅人主将と本多晃専(こうせん)二塁手。入部以来、夏の大会が終わって3年生が引退すると、チームは毎年部員不足に陥った。「野球っぽいこともできなかった」(島田監督)時期もある中で、ひたむきに努力してきた2人だ。

 合同チームで試合に出場することも度々あった。他校の選手と交流し、切磋琢磨(せっさたくま)できたことは良い経験だった。しかし練習の日程や戦術の調整、コンディションの把握の難しさなど、練習を進める上でさまざまな困難があった。

 昨夏の愛知大会後、部員は1、2年生計8人に。昨秋・今春大会は他5校との合同チームで西三河地区予選に出場したが、計4試合をいずれも大敗した。

 悔しさを胸に、島田監督は今夏の大会に単独チームでの出場を目指し、複数の中学の野球部へ足しげく通った。1年生から試合への出場が期待できることや、選手らの日ごろの頑張りを訴えた。島田監督の思いが通じ、今春に9人の新入生が入部。1~3年生計17人の部員で夏の大会に単独での出場がかなった。

 1回戦の相手は、昨秋県大会ベスト4の小牧南。新粥主将は「ともに汗を流してきた仲間と頑張りたい。監督と友人の応援を無駄にできない」。本多選手は「伸び悩んだ時は(島田監督が)近くで寄り添ってくれた。恩返しがしたい」と語る。島田監督は「野球は何が起こるかわからん。ここで勝てば、めちゃくちゃ楽しいぞ」と選手たちを鼓舞した。【荒木映美、塚本紘平】

球児減少、少子化とスポーツの多様化背景に

 部員不足に悩む野球部は多い。背景にあるのが、少子化とスポーツの多様化を受けた全国的な高校球児の減少だ。日本高校野球連盟によると、2024年度(5月末現在)の全国の硬式野球部員数は前年度比1326人減の12万7031人で、10年連続の減少となった。31道府県で前年から減り、減少数は愛知県(部員数6800人)が130人で最多だった。続いて静岡県(同3871人)の116人、福岡県(同5596人)の112人となっている。

 愛知県高野連の鶴田賀宣理事長は、同県の減少が最多だったことについて「部員数が全国で2番目に多いこともあり、減少数が大きくなるのは仕方がないが、数年単位で見守っていく必要がある」と話す。

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