「みんなで野球をやろう」

 6月22日、第106回全国高校野球選手権地方大会が開幕した。全国のトップを切って始まった沖縄大会の開幕試合に登場した辺土名の主将・宮城海(2年)は今春、中学の野球部の後輩をそう誘ったという。

 辺土名は人口3千人弱の大宜味村にある県最北端の高校だ。ここ数年は連合チームでの大会参加が続いていた。宮城の呼びかけに、後輩ら5人の1年生が入部し、部員は9人に増えた。

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 北部農林との連合チームで臨んだ試合は5回コールド負け。ただ、秋の大会には単独チームで出場できる希望もあり、宮城は「後輩も頑張っていた。来年の夏は1勝できるように頑張りたい」と笑顔だった。

 今月3日に日本高校野球連盟が発表した調査結果によると、全国の硬式野球部員数は10年連続で減った。部員不足の学校は今後も増えると予想される一方、一部の強豪校には多くの部員が集まる。東京に人口が集中する日本社会と似た「二極化」が高校野球でも進む。

 今回の連載「人口減ニッポン 高校野球の今」で取材したのは、今春の選抜王者で選手88人の健大高崎(群馬)から、普段は1人で活動する大江(京都)まで、異なる環境で野球に打ち込む選手たちだ。

 ただ、彼らには共通点があった。「仲間」について語るときのキラキラとした表情だ。

 健大高崎の加藤大成は野手では2年生唯一のレギュラー。上級生中心の寮で生活するため、同級生と接する機会は多くない。それでも「(下級生中心の)Bチームで同級生が活躍したと聞くと、自分も頑張らないと、と思う」とうれしそうに言った。

 仲間の存在が心の支えになり、仲間と結束することで普段よりも大きな力を発揮できることもある。全国制覇や地方大会の1回戦突破など、目標はそれぞれ。「みんな」で最高の夏にしてほしい。(大坂尚子)

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