(2日、第106回全国高校野球選手権福岡大会1回戦 南筑7―0福岡講倫館)「勝ち続け、野球をする姿をずっと見ていて」。南筑の久富祐弥主将(3年)は、母と父への特別な思いを胸に、今大会に臨む。

 1年の冬、練習帰りに兄から連絡があった。「母さんが倒れた」。くも膜下出血だった。病院に駆けつけたが、母・正子さん(当時45)の意識は戻らず、帰らぬ人に。

 ショックでふさぎ込んだが、母の姿が思い浮かんだ。野球を始めた小学3年から毎試合、応援に来てくれたっけ。ルールなんて分からないのに。「キャプテンになって、みんなをひっぱる姿を見たい」。笑顔でそう話してもいたな。「野球をやるしかない」。10日ほどで部に戻ると、父・貴洋さん(45)が毎日、弁当を作ってくれるようになった。練習に打ち込んだ。苦手な打撃も、最後までグラウンドに残って素振りを続け、力をつけた。

 そして、主将として迎えたこの日。「力を貸してください」と心の中で母にお願いをして球場へ。弁当を開くと、大好物の照り焼きチキンが入っていた。打席で緊張したが、2安打2打点。母の笑顔を思い出し、リラックスできたお陰だ。捕手の守備もそつなくこなし、7―0で快勝。試合後、「妻も誇らしいはず」と喜ぶ父に、次戦の活躍を誓った。(太田悠斗)

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。