(27日、第106回全国高校野球選手権南北海道大会小樽地区1回戦 倶知安8―3小樽双葉)

 一回裏、連打でいきなり2点を失っても、焦りはなかったと倶知安の西川大貴主将(3年)は言う。チームが意識しているのは「負けていても、七回で3点差のゲームをつくる」こと。後半勝負が自分たちの持ち味だ。

 五回、小技を絡めて逆転に成功。同点に追いつかれたものの、七回に勝ち越し。九回には敵失に乗じて4点を挙げ、突き放した。

 3年生12人は、入部のときから変わらない顔ぶれだ。うち8人は中学軟式野球の後志選抜メンバー。「公立で私学を倒す」「下克上がかっこいい」「試合に出てこそ、得るものがある」。それぞれの思いを胸に、倶知安に集まった。

 1年の夏、全員で甲子園へ行き、選手権大会を観戦した。「ヒットを打つと、球場全体から歓声が上がる。絶対ここでやりたい」。この経験を無駄にはしないと、西川主将は誓った。

 学校では野球の試合ができないため、週末は札幌など道内各地に遠征した。最初は歯が立たなかった私学とも、徐々に競り合うように。行き帰りのバス内で、部員たちの絆はより一層深まっていった。

 迎えた夏の大会。選手宣誓を務めた西川主将は英語で語り出した。「All our dreams can come true――」。夢を追い求める勇気があれば、すべての夢はかなう。自分の夢は甲子園に行くこと、そして将来、英語の先生になって子どもたちに野球を教えることだと続けた。

 春の小樽地区大会に続き、強豪私学の小樽双葉を倒した。「春がまぐれじゃないことを見せられた」。ひとつ目の夢に一歩、近づいた。(岡田昇)

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