4月、ちょっぴり緊張した面持ちの山形県立米沢商業高校(米沢市)の新入生を前に、生徒会役員が応援歌「凱旋(がいせん)の覇者」や校歌を披露する対面式が開かれた。

 中央で威風堂々と歌ったのは応援委員長の本田雄飛(ゆうひ)さん(3年)。野球部の外野手で、広角に打ち分ける打撃が持ち味だ。

 看護師をめざす本田さんは「色んな経験をして、人にきちんと話をすることができるようになりたい」という思いをもって生徒会に入った。

 「出会った当初は人前でもじもじする面もあったけど、生徒会を始めてから、野球部でも自分の意見をしっかりと言えるようになった」

 生徒会副会長の星優哉(まさや)さん(3年)は本田さんの成長に太鼓判を押す。

 人の意見をまとめるのが得意な星さんは立候補して生徒会副会長に。野球部主将の二塁手で、長打力を誇る強打者だ。

 加藤正騎(まさき)さん(3年)は野球部の捕手。2人が学園祭の準備などで忙しくも楽しそうに生徒会活動をする姿を見て、1年遅れで生徒会の事務局員になった。

 米沢商野球部の3年生は生徒会執行部を兼ねる3人ですべて。中軸を打ち、チームの得点源だ。

4校束ね、再出発する学校の土台づくり

 チームは米沢商の単独ではない。野球部は2年生を含む計5人。今夏の山形大会は置賜農、高畠、上山明新館との4校による連合のチームだ。

 平日は各校で練習し、週末に試合や練習で集まる。6月には高畠で4校の選手が2日間の合宿をし、連係プレーの確認などみっちりと練習した。

 連合チームの主将でもある星さんは、生徒会の経験が生きていると感じている。

 「生徒会はできていないことがあると、手が空いた人に指示を出したり、『こうできるよ』と提案したりする。目配りが大切で、連合でも同じ。気づいたことは積極的に声をかけることでチームが結束する」と星さん。

 加藤さんは投手の性格や打者の癖を把握し、巧みなリードで信頼は厚い。守備位置や打球の処理について指示を出すなど声を出し続け、内外野の選手が復唱する声回しも大切にしている。

 「生徒会って、真剣に話し合うと硬くなっちゃって、意見が出なくなるところがある。何でも言ってくれるので、話し合いも楽しくなります」とは星さんの加藤さん評。

 加藤さんは「話し合いを見て、『こういう意見は出ないんじゃないか』と思うことを言ったり、方向性が見えたときに『こういうこともあるよね』と発言したりします」。持ち前の観察力が議論を活性化させる。

 米沢商は来年3月、120年余の歴史に幕を下ろす。米沢工と統合し、米沢鶴城(かくじょう)高校が誕生する。両校の生徒会同士の交流も始まっている。米沢商野球部の3人も、新たな歴史の土台づくりにあたる。(坂田達郎)

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