スポーツでは、選手だけでなく、グラウンドに立つ審判も対策が欠かせない。
夏の全国高校野球選手権に臨む審判員は、仕事を抱えながら、大会へ向け体調を整える。日本高校野球連盟の審判規則委員の担当者は「自分の担当の試合でベストに持ってこようとしても、できない日もある」と話す。
各自で工夫をこらす。例えば飲み物は、アミノ酸を入れたり、薬草茶にしたりと個々の体調に合わせて用意するという。冷感接触の下着を着用したり、高野連から配布されるアイスベストも着たり。春季地区大会から、スタンドに座り、暑さに体を慣らせる人もいる。
全国選手権では、熱中症の疑いで途中交代する審判が近年、増えている。北田直也審判員は、第101回大会(2019年)の3回戦、敦賀気比(福井)―仙台育英の球審を務めた際、左足がけいれんし、八回裏に治療を受けたが、そのまま交代した。
北田さんによると、「元々暑さは苦にしないタイプ。その時は五回終了時の整備で室内に戻った際に暑いと感じた」という。
給水した後にグラウンドに戻ると、終盤に足がけいれんした。「太ももの前がけいれんし、動けなくなった」。交代後、医務室で点滴を3本打った。症状が良くなったため病院には行かなかったという。
原因は特定できないが、「球審はマスクや防具をつける分、塁審と体感温度も変わってくる。当時は単身赴任で慣れない環境でもあったし、多少の寝不足もあったのかもしれない」と振り返る。
このことを教訓に、理学療法士からも助言をもらい、試合30分前に経口補水液を500ミリリットル、飲み干すようにしている。
「体に蓄えておくのも大事と聞いた。無理してでも飲むように心がけている」と北田さん。試合前と五回終了時には、けいれんを予防する漢方薬もとるなど工夫している。昨夏導入されたクーリングタイムで、審判も着替えや水分補給の十分な時間を確保できるようになったという。
地方大会を主催する都道府県高野連も対策を練っている。
イニングの表・裏ごとに開始時間を記録し、20分を超えたら選手も審判も水分補給。2イニングごとに審判に給水を促す高野連もある。和歌山県高野連では、地元の名産である梅干しを用意。五回終了時に審判が口に含み、塩分を取っている。(大坂尚子)
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