全国中学校体育大会、いわゆる「全中」について、6月8日、規模の縮小が発表されました。2027年度から水泳やハンドボールなど9競技が実施されなくなり、県内の中学生や指導者からも落胆の声があがっています。

【鍋島中3年 岩下健琉副キャプテン】
「中学生の一番。憧れ、目標」

中学生スポーツ最大規模の全国大会として1979年から毎年開催されている全国中学校体育大会「全中」。昨年度は陸上やサッカー、柔道、剣道など20競技が実施されました。
一方、日本中学校体育連盟は2027年度から水泳やハンドボール、体操や新体操など9競技を全中の実施競技から外すことを発表。基準は「2022年度に部活動の設置率が20%未満だった競技」としています。理由については「大会運営にかかわる教員の負担を減らす」ことや「少子化への対応」などをあげています。
佐賀市の鍋島中学校水泳部。現在の部員は男子のみの11人です。部員は減少傾向ですが、以前は全中に出場したこともあります。

【鍋島中3年 岩下健琉(たける)副キャプテン】
「寂しいというか悲しい。全中には出場してみたいという感じでした。中学生の一番、憧れ目標」

県内の水泳部の部活動設置率は20%未満ですが去年、全中佐賀県予選の水泳競技に出場した生徒は約230人。学校の水泳部には所属せず、クラブチームから出場する生徒も多く競技人口が少ないとはいえません。
水泳部顧問の野口基勝さん。中学生の時に全中に出場し、飛込競技で4位の成績を収めました。

【鍋島中水泳部顧問 野口基勝さん】
「自分も中学生のころはあの舞台で戦ってきたこともあったので、やはり寂しいという気持ちが大きかった。誰もが目指したい場所でもあるので」

子供たちはもちろん、指導者にとっても部活動の大きな目標となっていた全中。野口さんが求めるのは、その代わりとなる大会です。

【鍋島中水泳部顧問 野口基勝さん】
「水泳連盟が動いて、中体連(全中)に代わるようなスポーツ大会を開いていただけたら、自分たちのモチベーション、部活動を担当している先生も、生徒たちもそこを目指して頑張ろうとなりますので、今後そういう大会ができることに期待したい」

私立佐賀清和中学校ハンドボール部。創部は1999年で現在の部員は男女合わせて14人です。

【佐賀清和中3年 関清斗キャプテン】
「母から帰宅した時に教えてもらって驚きました。全国大会に行くことを目標としていたので、その機会が減ってしまうのは寂しいなと思いました」

佐賀清和中は「全中」への出場経験はなく、チームの「目指す場所」となっていました。

【佐賀清和中3年 関清斗キャプテン】
「自分たちの代では勝ったら全中に行けるけど、自分たちの下の人たちは行けないので、ハンドボール部に入ってくる人が減ってしまうのではないか心配です」

県内で活動している中学校のハンドボール部は神埼中、東原庠舎中央校、そして佐賀清和中の3校のみ。今回の決定が競技人口の減少につながらないか不安視されています。一方でこうした期待も。

【佐賀清和中男子ハンドボール部顧問 中尾圭一さん】
「開催する県の負担を考えると、なくなることで間違いなく負担は軽減されることになるのかなと」

大会は関東や九州、中国など全国9つのブロックが持ち回りで開催していて、指導する教員は担当する部活動の指導に加えて大会運営も負担します。

教員の負担軽減も目的という全中の競技縮小。その一方で、長年指導を続けてきた教員は複雑な思いで生徒を見守っています。

【佐賀清和中男子ハンドボール部顧問 中尾圭一さん】
「本当にいろんな思いが詰まった最後の最後の大きな大会が全中なので。(大会縮小は)本当に残念でしかない」

部活動を指導する教員の中には、「全中がなくなっても部活動の練習量を減らす訳にはいかないので、これからも指導者の負担はほとんど変わらないのではないか」という声もありました。文部科学省は教員の負担軽減などを目的に、部活動による指導を地域クラブの指導に移す「地域移行」を進めています。
県内では現在、陸上、軟式野球、サッカーの3つのクラブチームが地元中学校の部活動から移行して練習を行っています。今後はこういった「地域移行」を進めながらも、子供たちの「夢の舞台」を奪わないような制度改革が求められます。

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