東京ドーム、神宮球場で開催中の第73回全日本大学野球選手権。プロ注目の青山学院大・西川史礁外野手(4年、龍谷大平安)や大商大・渡部聖弥外野手(4年、広陵)らが出場し、大学最終年にかける思いは強い。

 今の4年生の多くは高校3年生のとき、新型コロナウイルスの影響を大きく受けた世代だ。夏の全国選手権大会に向けて準備していた2020年5月、大会の中止が発表された。

 「甲子園」という夢への道が閉ざされた。

 その無念さを力に変え、大学で野球を続けた選手もいる。

 長崎県佐世保市出身の関学大・坂口航大内野手(4年、大崎)は、主将として迎えた高校最後の夏に「優勝」した。ただ、県の独自大会だったため、甲子園にはつながらなかった。

 「中止はショックだった。甲子園にあこがれて高校野球をやっていたから」。進学先を関学大に選んだのは、関大との伝統の一戦「関関戦」が、甲子園で行われていることを知ったからだ。

 この春、関学大はリーグ戦で3年ぶりに優勝。「甲子園ではないけど、大学で全国大会に行けて本当にうれしい。あきらめなくて良かった」と話していた坂口は11日、共栄大戦で2安打を放って勝利に貢献した。

 関学大は春季リーグで4度のサヨナラ勝ちをおさめた。いずれも異なる4年生が放った殊勲打だった。本荘雅章監督は「今まで(の4年生)と違う」とし、「昨年まで低迷していて、あの子たちのすごいところは『今年で土台を作るんだ』と言ってくれること。そういう経験は今までない」。後輩たちを優先して考える最上級生たちに、感嘆する。

 敗退した共栄大の4年生バッテリーも、沖縄の県独自大会で優勝した八重山高出身だった。

 砂川羅杏(らいあん)投手と比嘉久人捕手。小学校から幼なじみの2人は夏の甲子園の中止が決まった後も切磋琢磨(せっさたくま)し、大学でエースと4番として全国大会に臨んだ。

 砂川は七回途中2失点で降板。比嘉は4打数1安打に終わった。試合後、比嘉は「高校で完全燃焼しきれず、大学では全国の舞台に立てるように、と羅杏と一緒に頑張ってきた」と親友に思いをはせた。

 「全日本選手権出場が目標だったので、4年目の自分たちの代で来られて良かったです。秋も頑張りたい」と比嘉。すがすがしい表情で、神宮球場を後にした。(室田賢)

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