10日に開幕する全日本大学野球選手権で、注目の1年生コンビが全国デビューを果たす。

 関西六大学の代表として、7大会連続14回目の出場を決めた大商大。春のリーグ戦で特に目立っていたのが真鍋慧(けいた)(広島・広陵)と中山優月(ゆづき)(奈良・智弁学園)の1年生2人だ。

 昨夏、ともに甲子園に出場した2人は高校時代、交流は全くなかった。対戦経験もないが、入学前の練習で顔を合わせてから、すぐに心が通じ合った。

 「中山は練習意識が本当に高い。自分も意識を高く持っているうちに、一緒に行動するようになった」と真鍋は言えば、中山も「真鍋と一緒なら成長できる」。2人で同じ時間割になるよう講義を取り、授業が終われば一緒にグラウンドへ向かう。

 高校時代に通算60本塁打を超えた真鍋は今春、全10試合に先発出場した。上位打線を任され、4月14日の龍谷大戦では大学1号となる右越え本塁打。打率3割1分7厘、1本塁打、7打点の成績で指名打者としてベストナインも獲得した。

 「大学は落ちる変化球のキレがすごい。高校生にはそういう投手が少なく、苦戦した」と真鍋。「試合に出れば、1年生だからなんて言ってはいられない。先輩の思いも背負って、チームのために得点を挙げる選手にならないといけない」と臆する様子はない。

 中山は、大学では珍しい投打の「二刀流」の選手だ。投げては3試合にリリーフ登板し、計5回で防御率0・00。内野手としても4試合に先発出場し、打率2割5分、1打点だった。

 入学時、富山陽一監督からは「どっちもやってこそ、お前やぞ」と背中を押された。「どっちかが良くて、どっちかがダメだったら二刀流の意味がない。中途半端が一番ダメ」と中山。「投手は良かったけど、打撃は悔しい結果になった。自分はまだまだ」

 智弁学園、広陵はともに昨夏の第105回全国高校野球選手権記念大会は3回戦で敗れた。

 自身3度目の甲子園だった真鍋は同点の九回無死一塁で、犠打を試みたが失敗した。その後のプロ野球ドラフト会議では指名漏れの悔しさも味わった。「自分の実力がなかった。大学で頑張るしかないと。その気持ち忘れずに今も取り組んでいる」

 中山は初めての甲子園だった。投打で活躍する姿が評価され、U18(18歳以下)ワールドカップ(W杯)の日本代表に選ばれた。大会でも結果を残し、初優勝に貢献した。

 チームメートだった大阪桐蔭の前田悠伍(現ソフトバンク)、山形中央の武田陸玖(りく)(現DeNA)らは「化け物でした」と中山は笑う。「正直、こんなところに自分がおっていいのかというくらい高いレベルの場所を経験した。自分はしっかり大学で鍛えたい、と」

 2人にとって、高校時代の恩師の教えが支えになっている。

 中山が二刀流を始めるきっかけは、智弁学園・小坂将商監督のすすめだった。「野球の幅が広がり、すごく自分にとって大きいものになった」と感謝する。

 「人間性をすごく大事にしている方。道具を大切にしたり、自分たちの朝練よりも早く来たりと、そういう姿を見て、言葉だけではなく行動で示すことが大事だと感じた。小坂監督と野球ができてよかった」

 真鍋は1年生から主力選手だった。期待して試合で使ってくれた広陵・中井哲之監督から、高校入学直後に言われた言葉が忘れられない。

 「親を大切にしなさい、と1番最初に言われました。それまで、深く親のことを考えていなかった。時間が経つにつれて、野球を続けられることは当たり前じゃないと本当に感じる。今、野球が大学でできているのも親のおかげです」

 高校までと違い、自主練習が中心の大学では自ら課題を見つけて克服しなければ成長できない。互いの力を認め合う2人は「考えて野球をやらないと、おいていかれる」と口をそろえる。

 一方で、高校時代にしのぎを削ったライバルたちとの対戦も楽しみにする。中山が「U18日本代表で同じだった早稲田大の安田(東京・日大三)たちと対戦したい」と言えば、真鍋はきっぱりと「広陵の同期には誰にも負けたくない」。

 入学して2カ月あまりの2人が目指すのは、チームの初優勝だ。大商大は10日、東京ドームで中央学院大(千葉県大学)と対戦する。(室田賢)

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