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◇◇取材こぼれ話◇◇
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《基礎情報》池田向希(いけだ・こうき)選手
世界の強豪“日本競歩”
男子20キロ競歩の速さは時速およそ16キロ。
このペースでマラソンの距離を歩けば2時間40分台という驚異的なスピードです。
3年前の東京オリンピックでは、この種目で日本勢が躍進。
池田選手が銀メダル、山西利和選手が銅メダルを獲得しました。
その後も、山西選手が世界選手権連覇を果たし、池田選手も銀メダルを獲得するなど日本は世界屈指の“競歩大国”となりました。
とにかく次の足を前に
その日本競歩の顔とも呼べる存在となった池田選手。
世界トップレベルの実力を支えているのは足の回転数の速さです。
身長1メートル68センチの池田選手は体格ではかなわない海外勢と渡り合うために歩型を磨いてきました。
池田向希 選手
「とにかく次の足、次の足を前に出す、先に次の足を考えることを意識していたら自然とそれが身についた」
勝敗左右する厳格なルール
池田選手が歩型を大事にするのには理由があります。
歩型の乱れは競歩の勝敗に直結するからです。
歩き方に厳格なルールがある競歩では、歩く際には、常にどちらかの足を地面に接しておく必要があります。
さらに、かかとが地面についてから、脚が地面と垂直になるまでは膝を曲げてもいけません。
違反を繰り返すと20キロ競歩ではペナルティーゾーンでの2分間の待機が科せられ、さらに違反すると失格になります。
「どうしても高くなってしまうと浮いてるように見えてしまうので、低く低く地面すれすれを目指して振り出すというところを心がけている」
カギを握る“上半身”
ペナルティーを取られることなく最後まで歩ききるために池田選手がカギを握ると考えているのは、意外にも“上半身”の動きだといいます。
東京オリンピックのあと指導者やトレーナーのアドバイスを受けて腕振りの形や歩く姿勢を見直してきました。
「無駄な力が体に入ることで体が固まり、動きが小さくなりスピードも落ちてしまうというのがよくあった失敗。そこを変えるために最初から最後まで力まないように、無駄な力を入れずにリラックスした状態を維持することを考えた」
その成果は、パリオリンピックの代表選考を兼ねたことし2月の日本選手権であらわれました。
意識してきた力まない歩きでスピードに乗った池田選手は、序盤の6キロすぎでトップに立ちました。
その後は後続を引き離し、1度もペナルティーを受けることなく、フィニッシュ。世界歴代3位の好タイムで優勝し、パリオリンピックの切符をつかみました。
5年ぶりに自己ベストを更新した池田選手のことばからは確かな手応えが感じられました。
「練習内容を見ても5年前よりも明らかに成長しているのは分かっていたので、あとは条件さえそろえばいつでも自己ベストは出るだろうなと思っていた。日本選手権は比較的コンディションや条件もよかったので、結果にタイムもついてきた」
東京大会ではあと1歩届かなかった金メダルを手に入れるために。
パリの舞台では進化した“美しい歩型”で希望に向かって歩きます。
「オリンピックは支えてくれている周りの方々や応援してくれている方々に恩返しができる絶好の舞台だと思う。そういった方々に勇気や感動を与えられる歩きを見せたい。私の名前は『希望』に『向かう』と書いて向希と、親がつけてくれた。自分自身が描く希望であったり夢であったり、そういったところに向かって日々挑戦、チャレンジしていきたい」
◇◇取材こぼれ話◇◇
池田選手の20キロ競歩の自己ベストは、ことしマークした世界歴代3位の1時間16分51秒。2015年に鈴木雄介選手がマークした1時間16分36秒の世界記録にあと15秒に迫るタイムです。
池田選手に世界記録更新についての思いを尋ねると「ここまでいくと次は世界新記録だというほうに、ちょっと欲が出てしまうが、まだまだ先は長いと思うのでじっくり追っていきたい」と力強いことばが返ってきました。
金メダル獲得と世界新記録。
世界トップに登り詰めるために池田選手はスピードを上げたときにも崩れない技術を磨きたいと話していました。
「最後の最後まで諦めない姿勢や粘り強さに注目してほしい」と話す池田選手の思いが込もった歩きに期待したいと思います。
(2024年4月26日「おはよう日本」で放送)
《基礎情報》池田向希(いけだ・こうき)選手
▽生年月日:1998年5月3日
▽出身:静岡県
▽主な実績:
・2021年 東京五輪 銀メダル
・2022年 世界選手権 銀メダル
・自己ベスト:1時間16分51秒(世界歴代3位)
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