衆院予算委員会で答弁する菅家一郎氏=国会内で2019年2月4日、川田雅浩撮影

 自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件で、菅家(かんけ)一郎元副復興相=衆院比例東北ブロック=が2021年、安倍派からキックバック(還流)された678万円を原資に、自身が当時代表を務めていた党支部に計1201万円を寄付し、所得税の一部を控除される税優遇を受けた疑いがあることが判明した。毎日新聞は福島県選挙管理委員会への情報公開請求で、菅家氏の控除申請に関する書類を入手した。

 選管が開示した「寄付金(税額)控除のための書類」(21年分)は計1201万円分を控除対象として記載。菅家氏は取材に「直ちに法令に従い修正申告し、返った金額は税務署に納付した」と書面で回答し、税優遇を受けた事実を認めた。

 寄付金については「派閥からの寄付として計上しないよう言われていたことから、やむなく個人名義として政治団体の収入に計上した」とした。ただし、派閥から政治団体への寄付を原資に、個人が税控除を受けたとすれば不適切ではないか、との質問には回答しなかった。

専門家「360万円還付受けた可能性」

 租税特別措置法では、個人が政党や政党支部などに寄付した場合、寄付額の約3割が税額控除されるか、課税対象の所得総額から寄付分が差し引かれる。

 税理士の浦野広明・立正大法制研究所特別研究員(税法学)の推計によると、年間の所得額で変わる可能性があるが、菅家氏は21年の寄付で約360万円の還付を受けた可能性がある。

 菅家氏が当時、代表を務めていた「自民党福島県第4選挙区支部」の政治資金収支報告書によると、21年2~9月の計4回にわたり、菅家氏が計1201万円を同支部に寄付したと当初記載していた。

 裏金事件が発覚した後の24年1月末、同支部は収支報告書を訂正し、20年に104万円、21年に574万円を「清和政策研究会(安倍派)の寄付」として新たに計上した。この計678万円が安倍派から還流された「裏金」とみられる。

 同支部は21年に菅家氏が寄付したと記載していた計1201万円のうち、9月3日の「700万円」を「22万円」に訂正。678万円減額することで還流分と帳尻を合わせた形だ。

菅家一郎元副復興相が代表を務めていた自民党福島県第4選挙区支部の政治資金収支報告書。当初、菅家氏が700万円を寄付したと記載していたが、派閥の政治資金パーティー裏金事件後に訂正された

 控除申請に関する書類には、この「700万円」について、菅家氏が9月3日に寄付したと記載しており、還流された678万円が含まれていた疑いがある。毎日新聞はこの点を質問でただしたが、菅家氏の回答はなかった。一方、支出を収支報告書に記載したことを理由に「いわゆる裏金はない」との認識を示した。

日本大・岩井奉信氏「脱税まがいだ」

 政治資金に詳しい岩井奉信・日本大名誉教授(政治学)は「政治家が代表を務める政党支部に自ら寄付して税優遇を受けること自体が脱税まがいで、法律などで禁止すべきだ」と指摘。還流分が原資になった疑いについて「制度を悪用していると言わざるを得ない。菅家氏には説明責任がある」と批判した。

 一連の事件では、安倍派と二階派で議員側のパーティー券の販売ノルマ超過分が裏金化。自民党の調査で85人の収支報告書に不記載や誤記載があり、菅家氏を含む39人が処分された。【田中裕之、畠山嵩、安部志帆子】

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