日中韓3カ国が26〜27日にソウルで開くサミット(首脳会談)は東アジアの経済や安全保障に関する課題を話し合う場となる。4年半ぶりに対話を再開する背景には各国が直面する人口減少の問題や経済の停滞がある。日韓は中国の軍事力拡大に警戒感を高めており、対話を通じて自制を促す。3カ国を取り巻く状況をデータで分析した。

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日中韓が現在、頭を悩ます課題の一つは人口減少と少子高齢化だ。日本の総人口は1.2億人、中国は14億人、韓国は5千万人ほどと規模は異なるものの、それぞれが減少局面に入っている。

日本の人口は2011年以降、減少が続く。19年12月に開いた前回の日中韓首脳会談後、韓国は21年、中国は22年にそれぞれ人口減少が始まった。日本の減少率は前年比0.4%と際立つ。

少子化が急速に進んでいるのが主な要因と言える。ひとりの女性が生涯に産む子供の数の見込みを示す合計特殊出生率を21年の世界銀行の統計で比べると日本は1.3、中国は1.16、韓国は0.81だ。最新の各国の調査ではさらに下がっている。

労働力人口の減少などで将来的に現在の経済基盤を維持できない懸念がある。年間で3000万人超の往来(2018年)がある3カ国の人的交流を増やして相互の経済・社会活動を活発にすることが首脳会談での主要議題となる。

足元の経済状況を見ると停滞感が漂う。これまで経済が好調だった中国では不動産不況を起点とする需要不足や地方財政の悪化が起きている。

23年の国内総生産(GDP)の世界シェアは、中国が16.9%と米国に次ぐ2位につけるものの、21年のシェア(18.3%)から低下した。日本はドイツに抜かれ4位となった。ドル換算の統計で円安の影響が響いたとみられる。

実質経済成長率で見ると3カ国は新型コロナウイルス禍からは回復したものの、日韓は長期的な鈍化傾向が続く。中国も2000年代前半までの勢いを失いつつある。膨大な労働人口を成長の原動力としてきたため危機感を持つ。

岸田文雄首相、中国の李強(リー・チャン)首相、韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領は首脳会談で、自由貿易の重要性を確認する。米国と中国が貿易摩擦や政治的な対立を深めていても、日韓は隣接する中国と経済を完全に分離することはできない。

貿易をどれだけ互いに依存しているかを分析すると、日韓にとって中国はそれぞれの貿易総額の20%ほどを占める最大の貿易相手国だ。中国からみても日本が2位、韓国が3位につける。

中国にとっては米国が最大の貿易相手だ。日本は2位が米国、3位がオーストラリアと続く。韓国も2位が米国で、3位にベトナム、4位に日本と続く。

3カ国の相互依存度は高く、各国の経済協力が順調に進まなければ、日中韓の枠組み内で経済停滞を招きかねない状況にある。これが首脳会談を復活させる要因の一つでもある。

日中韓は22年に発効し、東アジアに世界経済の3割を占める自由貿易圏を生み出した地域的な包括的経済連携(RCEP)に加わっている。

米国の輸出規制や関税率引き上げの影響を受ける中国は、さらに日中韓3カ国の自由貿易協定(FTA)の早期妥結も求めている。

日韓は中国に経済安全保障上の懸念も抱える。食料や資源のサプライチェーン(供給網)の強化に向けた透明性の確保を訴える。

首脳会談にあわせて各国の経済界が参加する「ビジネスサミット」を開き、3首脳が互いの国への投資拡大を呼びかける場も設ける。

軍事面では中国の力が突出する。23年版の日本の防衛白書によると、中国は97万人の陸上兵力を保持し、韓国の42万人と日本の14万人を足しても2倍ほどの開きがある。艦艇を232万トン、作戦機を3190機保有するなど日韓を圧倒する。

日本を取り巻く東アジア周辺は、こうした中国の軍備強化で緊張感を増している。23日〜24日にかけて中国軍が台湾周辺で軍事演習するなど、日本の近海で脅威が増幅している。数年内の台湾有事の可能性が指摘され続けている。

19年の首脳会談の後、22年にロシアによるウクライナ侵略が起こり、北朝鮮は核・ミサイル開発を進展させている。中国、ロシア、北朝鮮の接近で国際秩序は変化しており、日韓がどの程度中国に懸念を伝えることができるのかが注目点となる。

中国国家外貨管理局によると、23年の外国企業からの直接投資が前年比で8割減少した。中国にとっても日韓との対話で緊張の高まりを抑え、日韓からの投資の活性化につなげられるかが課題となる。

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