機密情報の保全対象を経済安全保障分野に広げる「重要経済安保情報保護・活用法」が10日、参院本会議で可決・成立した。重要な情報へのアクセスを有資格者に限るもので、政府が推進する経済安保政策の一環だ。
政府が重要経済安保情報保護・活用法を制定した背景には、人工知能(AI)や半導体など民間企業が持つ技術が軍事に利用されるケースが増え、その情報管理が国家の安全保障の大きな課題となっているためだ。半導体を巡る米国の対中輸出規制が強化されるなど、先端技術を巡る大国間の覇権争いも激しさを増す。
新法の柱となるセキュリティークリアランス(適性評価、SC)は米欧主要国で導入が進んでいる。日本には民間を広く対象とするSC制度がなく、各国との情報共有の障害となっていた。政府はSC導入により「すでに情報保全制度が活用されている同盟国・同志国との間で協力を進めていくことを可能にする」と強調する。SC制度が未整備なため、海外企業との共同研究などで日本企業が参加できないケースもあり、産業界からも導入を求める声が上がっていた。
新法のSC制度による身辺調査は、政府機関から機密情報の提供を受ける民間企業の従業員や研究者らが対象になる。企業はそれらの情報を所管する各省庁に対し、調査対象者の名簿を提出。調査は原則、内閣府が一元的に行う。
漏えいした場合に国の経済安全保障に支障を与える恐れがある政府保有の情報を「重要経済安保情報」に指定。政府は、サイバー脅威や対策などの情報▽審査などに関する規制制度関連情報▽サプライチェーン(供給網)上の脆弱(ぜいじゃく)性などに関する調査・分析・研究開発関連情報▽国際的な共同開発研究に関する情報――の4分野の情報を候補として示している。漏えいした場合には5年以下の拘禁刑もしくは500万円以下の罰金を科す。
機密の度合いがより高く、漏えいすると経済安保に「著しい支障」が生じる恐れのある重要情報については、懲役10年以下の罰則を科す特定秘密保護法の運用を経済分野に拡大して適用することも定めた。【町野幸】
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