南越前町議会は6日、議員報酬を引き上げるよう岩倉町長に要望書を提出しました。ここ数年、全国の地方議会でも引き上げに向けた動きが活発になっていて、背景には「議員のなり手不足」という深刻な課題があります。
6日、南越前町議会の熊谷良彦議長らが南越前町役場を訪れ「議会のさらなる活性化や、今後議員を志す優秀な人材確保のためにも報酬増額が必要と考える」として、岩倉光宏町長に議員報酬の引き上げを申し入れました。
要望書を受け取った岩倉町長は「私個人としても尊重したい」として、今後、報酬の引き上げを検討する委員会を開くと答えました。
今回の報酬引き上げ要望の背景には、深刻な議員のなり手不足があります。3つの町村が合併してできた南越前町の議員報酬は、一般の議員で月額22万6000円、合併以来20年間据え置かれていて、県内17市町のうち下から2番目に安い金額です。
議員報酬以外に政務活動費などは支給されず、税金などを引くと手取りはさらに少なくなるといいます。
熊谷議長は「(手取りは)だいたい18万円。手取り18万円では普通の家庭生活は日本ではちょっと難しい。物価も上がってますし、この時期で見直さなければ本当に誰も議員にならない」と危機感を口にします。
議会の最年長で80歳の山本議員も「市や町の場合、専業で議員をやる形は少ない。議員報酬が生活の糧のすべてではないので成り立っていた。若い人が積極的に出てきてもらうためには、(金銭面の)条件が整うことは大事。ぜひ実現して欲しい」と、議員報酬の引き上げによる議会の活性化を期待しています。
議員報酬の引き上げについて町民からは「安いね。僕の年金より安いんではあかんわ。良い政治してもらえないわ」「町議会議員も昔は名誉職だったが、人口減少でなり手も少ない。議員報酬も世間並みに上げた方が良い」と肯定的な意見が出ています。
同様の議員報酬引き上げの動きは全国でも広がっています。県内では美浜町議会がなり手不足の解消などを理由に、現在開かれている町議会で月額23万5000円の報酬を38万2500円に引き上げるよう求める決議案を提案しています。
市民の代表として、地域の要望を行政に届けたり政策の提言を行ったりするなど、私たちの暮らしに直結する市政運営を担う議員活動の対価。
あなたは安いと思いますか?それとも高いと思いますか?
県内17市町の議員報酬では、最も高いのは福井市の63万円で、最も安いのは永平寺町の22万円と自治体によって大きな差があります。
ちなみに県議会議員は月額78万円、県内の2023年度の平均初任給は、大卒の総合職で20万9082円です。(※2023年度県経営者協会調べ)
議員報酬は市町によって差が大きく、南越前町の議員報酬は大卒の初任給と大差ありません。確かに月収20万円前後では、専業で家族を養うのは厳しい状況です。
南越前町議会の過去の選挙を見てみると、前々回(2018年)の町議会選挙では、定数14に対して20人の立候補がありましたが、2022年の町議会の選挙では、定数12に対して立候補者は13人と、議員を志す人はあきらかに減少しています。
報酬引き上げが「なり手の裾野を広げることにつながれば」という思いとともに、引き上げにふさわしい議員活動や議会での活発な議論に期待が持たれます。
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