兵庫県・斎藤元彦知事の選挙活動について、公職選挙法をめぐる騒動が起きています。
兵庫県西宮市のPR会社の代表が、知事選で斎藤知事の公式SNSなど広報全般に携わったとするコラムを公開。「監修者として、運用戦略立案、アカウントの立ち上げ…などを責任を持って行った」と記し、今回の広報活動を「仕事」と言及しました。
総務省のホームページによると、「業者に主体的に企画制作させ、報酬を支払った場合は“買収”となるおそれが高い」とされており、PR会社代表の行為は公職選挙法に抵触する恐れがあると問題になっています。
斎藤知事側はチラシのデザイン代などとして、約70万円を口頭契約で支払ったことを認める一方、コラムの内容については「認識と全く違う。あくまでボランティア」と、両者の言い分に大きな食い違いが生じています。
■「みんなちょっと冷静に…“違法”認定はハードル高い」
27日、関西テレビの「旬感LIVEとれたてっ!」に出演した山岸久朗弁護士は、「みんなちょっと冷静に…“違法”認定はハードル高い!」と冷静な対応を求めました。
【山岸久朗弁護士】「いま『当選無効なんじゃないか』とか『失職』とか言われていますが、まだそこまで事実が明らかになっていないのに、ちょっとそこまで加熱するのはやりすぎだと思います」
■公職選挙法は「シンプルに見たほうがよい」
【山岸久朗弁護士】「もっとシンプルに法律を見たほうがよくて、公職選挙法は簡単で、『選挙運動を他人に頼んだ時はお金を払ったらダメ』。選挙運動を頼んでお金払ったら買収にあたって罪になる。それだけなんです。
例外としてポスターを作ったり、ビラを作ったりは許されている。あと事務員を雇ったり、ウグイス嬢を頼んだりしてお金を払うことも許されている。こういう例外があったらお金を払っても許される。
今回のケースでは70万円払っている。斎藤知事側の弁護士からすでに出ている5つの項目があり、主にポスターだったり、ビラだったりというところですけど、それは公選法の範囲内なんです。しかも金額的に70万円、例えばポスターとかビラということならそんな高くないんですよ。逆にSNS戦略立案までやらせていると言ったら、70万円じゃとても足りないはずなんです。
そうすると今回の件、今出ている事実だけから見ると、検察官が起訴するかどうかといったら、最近の判例や何かを見ていると、起訴までには至らないんじゃないのかなと。はっきり言えば、そこまで重い罪でもないです。無罪になるリスクを背負って検察が起訴するかどうかといったら、僕はネガティブに捉えている。
今、PR会社の社長がまだ出て来ていなくて、私の見たところ、要するにnoteに書いていることが問題になっているんです。事実だったのか否か。代理人弁護士の会見もまだで、きちんとした証拠も出ていない中で、『公職選挙違反じゃないか』と言ってたたきまくるというのは、まだ時期尚早」
■「選挙カー上でライブ配信」お金が払われていれば公選法違反の可能性も
捜査機関の動きはどうなのでしょうか?
【関西テレビ 加藤さゆりデスク】「現時点でこの件で捜査機関が動いているという情報はありません。ただ一方でこれだけ話題にはなっていますので、警察・検察も任意での捜査というのは、もしかしたら進めるかもしれません。強制的に行うといった段階ではないということです。明らかになっている事実はポスター制作費として70万円支払った。これ以外に例えば選挙期間中にお金が発生しているのか。あとメールにやりとりが残っているかといったところは、もしかしたら調べていくかもしれないということです」
【山岸久朗弁護士】「私の見たところでは、きっと今、斎藤知事の代理人はPR会社の方と接触を試みている。それでnoteに書かれていることが事実じゃないんだったら、きちんと出てきて会見してくれと。そうしたら世論が多分変わると思うので、それを弁護士として一生懸命交渉しているところだと思います」
選挙カーの上に乗ってSNSを発信していることは映像として残っています。PR会社代表のコラムで当初は「広報という仕事」をしたと発信されていました。斎藤知事陣営は「ボランティア」ですと言っていますが、これがボランティアだというのは通用するのでしょうか?
【山岸久朗弁護士】「“選挙活動”なのかどうです。例えば選挙カーに乗ること自体は別に禁止もされていないし、乗ったからといって選挙活動になるものではないと思うんです。やっていることがそもそも選挙活動といえるのか。
(その場でライブ配信をしていたということですが)それに関して、お金を払っているかどうかです。請求書があるという話なので、きっと知事側の会見で出てくると思うんです。5つの項目の中に、選挙カーの上でライブ配信していたものが入っていたかのかどうか。それを広報としてお金が入っていたら、確かに公選法違反の可能性が出てきます」
■「PR会社が説明義務を尽くさないといけない」と山岸弁護士
一番最初のPR会社代表の発信では、「広報全般を任された」「私が監修者」だと書かれていて、公職選挙法における選挙活動の主体性が問題になります。
斎藤知事陣営はあくまで「こちらが主体」だと言っていますが、PR会社代表のコラムを読む限りでは、代表が主体的にやっていたのではないかともみられます。
【山岸久朗弁護士】「ちゃんと責任を持って出てきて、PR会社が説明義務を尽くさないといけないと思います。まだ事実が明らかになっていない、食い違っているところを、きちんと出していかないと事実は見えないと思います」
PR会社は今のところ会見をしていません。これについては、どのような事情があると推察されるのでしょうか?
【山岸久朗弁護士】「私の個人的な見立てですけれど、やっぱり自分のPR会社をPRするために、ちょっと盛っちゃったところがあるんじゃないのかなと。やってもいないところまでPRしちゃって、今こんなことになって、修正しているというか、そういう場面だと思うんです。チェックしてくれる人はいなかったのか。いわゆる公選法に詳しい人がこのPR会社にいなかったんでしょう。だからたたかれて初めて気が付いたんじゃないですか」
もし斎藤知事の立場に立つと、「なんて発信をしてくれたんだ。これだと公職選挙法に抵触してるように見られちゃうじゃないか」と怒ったり、名誉毀損で訴えるような動きが出てもおかしくありませんが、斉藤知事は冷静に特段の対応はしていないようですが…
【山岸久朗弁護士】「弁護士的にみると契約は口頭でも成立するので、いろいろ頼んだことがnoteに書かれたことによって、世間からあらぬ疑いをかけられて、精神的苦痛をこうむったので慰謝料請求もできると思うんです。
ただ今回の斎藤知事はいろんなことに関して、自分を批判したことを責めたりせずに、冷静にみているから、今回もわざわざそんなことをして火種を広げることはしないだろうと思っています」
27日夕方には斎藤知事側の代理人弁護士が会見を行う予定で、どのような発信があるのか注目です。またPR会社側も何か動きや発信があるかどうかに注目していきたいと思います。
(関西テレビ「旬感LIVEとれたてっ!」2024年11月27日放送)
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