石破茂首相は15日(日本時間16日)、アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に出席するため訪問しているペルーの首都リマで、中国の習近平国家主席と初めて会談する。日本産水産物の輸入再開や拘束されている日本人の早期解放を求め、威圧的な海洋進出については力による一方的な現状変更を認めない姿勢も示す構えだ。
日本の首相が習氏と会談するのは、2023年11月に岸田文雄前首相が会談して以来1年ぶり。APECに合わせた会談は3年連続。中国は習氏に権力が集中しており、日本側はトップ会談を重視している。首相は10月に李強首相とも訪問先のラオスで会談しており、首脳級の会談は2カ月連続となる。
昨年の会談で日中首脳は、意見の違いがあっても協力し共通の利益を追求していく「戦略的互恵関係」の推進を再確認し、「建設的かつ安定的な関係」の構築で合意した。首相も10月の所信表明演説で岸田氏の路線を踏襲する考えを示し、14日には記者団に対して「両国間にはいくつかの問題もある。また共通に目指していかねばならない問題があり、率直な意見交換をしていきたい」と述べた。
日中両政府は9月、東京電力福島第1原発の処理水海洋放出を巡り、日本産水産物の輸入再開で合意したが、中国は具体的な再開時期を示していない。首相は日本産水産物の安全性をアピールし、早期再開を求める。
中国の反スパイ法の容疑で拘束されている日本人の早期解放や、深圳の日本人男児刺殺事件を受けた在留邦人の安全確保も改めて要請する。
沖縄県・尖閣諸島を巡る東シナ海や、フィリピンとの公船同士の衝突が激化している南シナ海などの地域情勢については懸念を伝え、力による現状変更を許さない従来の立場を伝える。台湾海峡の平和と安定も重要なテーマと位置づける。
首相は日中首脳会談に先立ち、バイデン米大統領と会談し、韓国の尹錫悦(ユンソンニョル)大統領を加えた日米韓首脳会談にも臨む。いずれも石破首相としては初めてとなる。
日米韓首脳会談は23年8月の米キャンプデービッドでの会合以来、1年3カ月ぶり。その際、首脳会合の年1回開催で合意していた。北朝鮮による核・ミサイル開発や、ウクライナ戦線への兵器・兵士の投入で悪化する極東情勢に備え、3カ国の連携メカニズムや共同訓練の強化について確認する。【村尾哲】
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