24日に投開票される名古屋市長選にかかる費用は6億2700万円。投開票所の運営▽候補者ポスターの掲示板設置と撤去▽投票用紙や選挙公報の印刷――などに充てられている。近年の市長選は投票率が50%を下回る状況が続くが、民主主義のコストについて考えてみた。【真貝恒平】
名古屋市では任期満了に伴う市長選が来年春に予定されていたため、2024年度当初予算に市長選の準備費として1億3700万円を計上した。しかし、前名古屋市長の河村たかし氏(76)が、10月に実施された衆院選に出馬したため、市長選は約5カ月前倒しとなった。市は10月23日に専決処分として、4億9000万円を追加補正した。
国政選挙と異なり、自治体の選挙は自治体が費用を負担する。その原資は市民の税金だ。市選挙管理委員会によると、ポスター掲示板の設置・撤去費に4000万~5000万円かかるが、投開票所や期日前投票所の管理人、職員の配置など人件費が中心になるという。
衆院選から休む間もなく市長選の準備に追われる市選管の担当者は「投開票日まで職員は総動員です」と疲れた表情で話す。
市長選の費用約6億2700万円を選挙人名簿登録者数の189万3142人で割ると、有権者1人当たり約331円の出費となる計算だ。市選管の担当者は「約330円という額は安いか高いかは分からないが、1票の先には名古屋市政の未来があり、投票することで331円以上の価値があると思うので、投票してほしい」と呼びかける。
市選管によると、近年の市長選の投票率09年4月50・54%▽11年2月54・14%▽13年4月39・35%▽17年4月36・9%▽21年4月42・12%――と低調に推移している。
名古屋大の山本竜大教授(政治コミュニケーション論)は「地方自治は自分たちの生活と密着するサービスが非常に多い」と指摘。そのうえで、有権者1人あたり331円のコストについて「小学生の遠足の『おやつ代』より低そうなこの金額は、これからの4年、それ以上の(自分たちの)生活を見通す指標の一つでもある。自分たちの投票によって、このコスト以上に得るものにするか、しないかを決められるということを有権者は考える必要がある」と話す。
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名古屋市長選には、元会社員、太田敏光氏(76)▽元副市長、広沢一郎氏(60)=日本保守推薦▽旅行会社社長、水谷昇氏(61)▽元大学講師、不破英紀氏(64)▽元自治大学校教授、鈴木慶明氏(85)▽元参院議員、大塚耕平氏(65)=自民、立憲民主、国民民主、公明推薦▽政治団体「緑の党・東海」共同代表、尾形慶子氏(67)=共産推薦=の無所属新人の7人が立候補している。
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